進捗遅れを防ぐには、チーム全員で危機感を共有し、遅れをいち早く見つけ、課題を確実に解消していくことが重要だ。この一連のマネジメントサイクルを回すにはどうすればよいのか。進捗遅れ対策で成果を上げている現場の工夫を紹介する。

 進捗遅れを防ぐ上で、プロジェクトマネジャーが果たすべき役割は大きい。たとえ優秀なメンバーが集まったとしても、マネジメント不在では、進捗遅れを防ぐのは難しいだろう。メンバーがじっくり丁寧にタスクを行えば、それによって進捗遅れが発生しかねないからである。

 そこでプロジェクトマネジャーにはチーム内で進捗遅れに対する危機感を共有し、適度な緊張感・プレッシャーを生み出すことが求められる。それでも、進捗遅れは必ず起こるものである。プロジェクトマネジャーは日ごろからメンバーの様子に目を光らせ、定例会での進捗報告を待つことなく、いち早く遅れを見つけ出したい。その上で、進捗遅れの原因となる課題を確実に解消していくことも重要だ。

 そこでこのPART2では、「I.危機感を共有する」「II.遅れをいち早く見つける」「III.課題を確実に解消する」という三つのテーマに分け、進捗遅れを防ぐマネジメントの工夫を紹介する。

I.危機感を共有する

 進捗が遅れているのは自分だけじゃない。何とかなるだろう──。進捗遅れが常態化している現場では、メンバーがこう考えてしまうことがある。そんなときに緊張感を共有しようと、プロジェクトマネジャーが口を酸っぱくして進捗を守るように訴えても、受け流されてしまうのがオチだ。

 そこでAJSの塩川康成氏(医療・産業システム事業部 医療システム部 開発グループ マネージャー)が工夫しているのは、プロジェクト全体の進捗遅れを引き起こす重要なタスクをつないだクリティカルパスの情報をチーム全体で共有することである(図1)。

図1●プロジェクト管理ソフトでクリティカルパスの情報を共有
AJSの塩川康成氏(医療・産業システム事業部 医療システム部 開発グループ マネージャー)らのチームでは、プロジェクト管理ソフトの「Microsoft Project」を使って、開発工程のクリティカルパスを共有。そのタスクを担当するメンバーに注意を喚起している
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 「メンバーは自分の担当タスクがクリティカルパスだと分かれば、チーム全体に迷惑をかけたくない、絶対に遅れられない、と危機感を持ってくれる。そういうメンバーがいると、ほかのメンバーもそのメンバーをフォローしようとして危機感が伝播し、チーム全体に進捗を守ろうという雰囲気が醸成される」(塩川氏)という。

 ただしクリティカルパスは、タスクの進捗が遅れたり挽回したりすることで変わっていく。そのたびに、どれがクリティカルパスであるかを調べるのは大きな負担になる。そこで塩川氏は、プロジェクト管理ソフトである「Microsoft Project」の分析機能を使い、自動的にクリティカルパスを表示させている。メンバー全員に日々の進捗を入力してもらう必要があるが、それ以外の手間はかからないという。

他メンバーへの影響を一目瞭然に

 ウルシステムズの松井幹雄氏(シニアコンサルタント)も、塩川氏と同じように「周りに迷惑を掛けたくない」というメンバーの心理を突いて危機感を共有している。その工夫は、メンバーの担当タスクの進捗が遅れたとき、他のメンバーにどんな悪影響を及ぼすのかについて“見える化”することだ。そのために松井氏は「機能別進捗管理表」を作成している(図2)。

図2●他のメンバーへの悪影響を見える化
ウルシステムズの松井幹雄氏(シニアコンサルタント)らのチームでは、各タスクの遅れの影響範囲を示すために、専用の進捗管理表を作成し共有。遅れているタスクの担当メンバーに奮起を促している
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 機能別進捗管理表では、「一括受注入力」「一括受注修正・キャンセル」といった機能ごとに、設計・開発(製造)・テスト設計という工程(タスク)の進捗を表す。遅れているタスクは、ピンクや赤の色を付けて目立たせる。設計・開発・テスト設計を経て、機能グループごとに結合テストを行う。つまり一つの機能の進捗が遅れると、それが属する機能グループ全体の結合テストが行えない。そのため機能別進捗管理表で自分の担当タスクにピンクや赤の色が付いていると、ほかの機能を担当するメンバーにも影響が及ぶことが一目瞭然である。

 松井氏は、この機能別進捗管理表を週次で更新し、定例会で共有する。これによって、メンバーは「自分のせいで結合テストを遅らせたくない」という危機感を持ってくれるという。

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