今、多くの開発者から高い注目を集めているのが、携帯電話やスマートフォンなどのモバイルデバイス上で動作するアプリケーション(以下アプリ)だ。スマートフォンのアプリがモバイル市場を席巻していくかのように見られていたが、現状を見ると、一見盛り上がってはいるもののビジネスという点では様々な課題が浮上してきた。

 一方、従来の携帯電話(フィーチャーフォン)で活況を呈してきたのが“ソーシャルアプリ”だ。そのマーケットに加え、NTTドコモがiモード端末向けのiアプリを配信するマーケット「ドコモマーケット(iモード)」を開始するなど、ビジネス面では既存の携帯電話向けマーケットも勢い付いているように見える。そこで、まずは現在に至るまでのモバイルアプリ市場の経緯について振り返ってみよう。


iPhoneが火をつけたスマートフォン・アプリマーケット

写真1●米アップルが運営するiPhone/iPad/iPod Touch向けの「App Store」
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 モバイルデバイス向けアプリに対する注目が高まったのは、米アップルがiPhone向けのアプリ開発環境を公開したことが大きい。従来の携帯電話向けアプリの開発にはセキュリティなどの影響から、さまざまな制約が設けられていた。だがiPhoneではそうした技術的制約が少なく、携帯電話では実現が難しかったアプリの開発が容易となったことから、多くの技術者の注目を集めることとなった。

 そして2008年に米アップルは、iPhone/iPod Touch向けアプリマーケット「App Store」(写真1)の提供を開始。開発者が国内だけでなく、世界中の多くの国々に向けてアプリを配信してビジネスできる環境が整った。携帯電話向けコンテンツプロバイダーの大半が、海外進出による成功を得ることができなかったという経験を持つ日本では、こうした海外に市場が広がる点もApp Storeが大きな注目を集めた要因となっている。

写真2●米グーグルが展開するAndroid搭載スマートフォン向けの「Androidマーケット」
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 App Storeの成功によって、他のスマートフォン向けプラットフォーム提供者も、続々とアプリマーケットに参入することとなった。ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの「Xperia」やサムスン電子の「GALAXY S」などに搭載されている「Android」を対象に、米グーグルは「Androidマーケット」(写真2)という独自のマーケットを展開。App Storeよりもさらにアプリ開発の自由度が高い点が特徴である。端末の急速な普及とあいまって、開発者から高い注目を集めるに至っている。

 ほかにも、スマートフォン向けのさまざまなプラットフォームが独自のマーケットを設けており、BlackBerry向けには「AppWorld」、Symbian向けには「Ovi Store」、Windows Phone向けには「Windows Marketplace for Mobile」がそれぞれ提供されている。

スマートフォン向けマーケットの課題が顕在化

 App StoreやAndroidマーケットをはじめとしたスマートフォン向けアプリマーケットは、先に挙げた通り(1)スマートフォン自体が持つアプリ開発の自由度の高さ、(2)日本にいながらにして世界中に配信できるということ、さらに(3)契約を交わしさえすれば法人だけでなく個人でも参入可能であること――など参入障壁の低さが、開発者の大きな注目を集めた要因である。しかし、App Storeの開始から2年半ほど経過した現在、当初の期待とは逆にさまざまな問題点が見えるようになってきた。

写真3●NTTドコモがAndroid向けに独自に展開する「ドコモマーケット(スマートフォン)」
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 特に有料アプリを配信してビジネスをしようという場合、メリットだと考えられていた点が、逆にデメリットとなっていることがある。まず(1)参入障壁が低いと、多くの開発者がアプリを開発するため、その品質にばらつきが出てくる。さらに価格競争が激しくなる。(2)世界中の開発者がさまざまな立場からアプリを開発・公開しているため、人気・定番のアプリは、有料・無料を問わず類似アプリが氾濫し、優良なアプリであっても埋もれてしまいやすい――などが挙げられる。実際、ゲームアプリなどは競争の結果、価格下落が著しい状況になっている。

 これらに加えて(3)レコメンド機能の少ないことが挙げられる。多くのアプリマーケットは、マーケット内に充実したレコメンド機能を設けているわけではない。App Storeではランキングと、決して多いとは言えなレコメンド情報から、ユーザーはアプリを選ぶ必要がある。Androidマーケットはさらに輪をかけてレコメンド情報が少ない状況だ。スマートフォン向けアプリのプロモーション手段も確立されているとは言い難い状況である。アプリの数は増えているものの、ユーザーはアプリを探しにくくなっているといえる。

 そして最後に、(4)決済手段の問題がある。App StoreはプリペイドのiTunesカードが利用できるが、基本的にスマートフォン向けアプリマーケットの決済手段はクレジットカード払いとなる。年齢制限などでクレジットカードを持てないユーザーも多く、このことがアプリ購入に対する大きな壁となっていることは否定できないだろう。

 こうした問題を解消するべく、日本国内では携帯電話事業者自らがアプリマーケットの運営に乗り出している。例えばNTTドコモが「ドコモマーケット(スマートフォン)」(写真3)、KDDIが「au one マーケット」を展開するなどの動きだ。レコメンド機能を強化したり、クレジットカード払いではなく月々の携帯電話料金の支払いと一緒に決済できるようにするなど、ユーザーがアプリケーションを購入しやすい仕組みを整えようとしている。

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