手軽にインターネットで動画の生中継ができるWebサービス「Ustream」。発電設備の建設を手掛ける日本工営は、これを社内会議などに活用している。数千円の市販機材を使い、海外からでも十分な品質で動画を中継できることを確かめた。対消費者だけでなく、企業内でもネット生中継するケースが増えそうだ。

 「数千円のWebカメラでも、映像の品質は十分。サービスの利用料金は月額5000円足らずだ。これを活用しない手はない」。日本工営 技術本部技術企画部情報基盤センターの小松淳センター長は、ネット生中継サービス「Ustream」の利点を、こう評価する。

写真1●今年8月に日本工営が実施したベトナムでの会議中継の様子
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 同社は国内外の事業所を結び、社内会議や技術発表会などをUstreamで生中継した。この8月末には、ベトナムのハノイと東京の本社を結び、現地の事務所長によるプロジェクト進捗報告会議を生中継した(写真1)。東京本社からは廣瀬典昭社長も、激励のメッセージを送った。

 同社はこれに先立って4月と7月にも、Ustreamを使ったネット生中継を実施した。初めて利用した4月は社長の新年度あいさつをインドネシアなど海外6カ国に、7月には年1回の社内技術発表会を国内外に、それぞれ生中継した。社長の新年度あいさつでは、国内外46カ所、7月の技術発表会も10数カ所に映像を配信した。

「タダ同然」でネット中継

 Ustreamの最大の利点は、コストパフォーマンスの高さだ。日本工営はUstreamの企業向け有償版サービス「Watershed」を使っている(画面)。利用料金は月額49ドルで、映像データの保存用に500Gバイトのストレージサービスを利用できる。

 撮影に使う機材も、家電量販店で購入できる安価なもので間に合うという。4月に社長のメッセージを中継した際には、約7000円のWebカメラを使った(写真2)。

画面●米ユーストリームの企業向けサービス「Watershed」の画面例
同社Webサイトから利用を申し込める(左)。管理画面を自社独自にカスタマイズすることも可能だ(右)
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写真2●日本工営が中継に使ったWebカメラ
カメラ用スタンドと合わせても費用は約3万円だった
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 テレビ会議の専用システムの価格は、最低でも数十万円かかるうえに、保守料金が別途必要になる。だがUstreamを使えば、これらは事実上ゼロになる。「ストレージ容量を考えると、利用料金自体はタダみたいなものだ」(小松センター長)。他のテレビ会議システムと同様、出張旅費の削減にもつながる。

 小松センター長は今後も、新興国などと東京を結んだ会議にUstreamを積極的に活用する考えだ。同社は全世界80カ国で事業を展開している。特に最近は、インドネシアやベトナムといったアジアの新興国における事業に力を入れている。「新興国でも入手可能な機材だけで、十分に中継できるだろう」(小松センター長)。

発言の様子が分かる

 肝心の映像の品質はどうだったのか。小松センター長は、「プレゼンテーションや、十数人程度が集まった会議室の様子を中継する分には全く問題はない。声もはっきり聞こえるし、表情も分かる」と高く評価する。

表●日本工営が4月に東京とインドネシアのジャカルタなどを結んで実施した会議中継の概要
この会議で米ユーストリームの企業向け動画中継サービス「Watershed」の実用性を検証した
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 小松センター長は実際に、Ustreamを使った映像品質を測定し、実用性があるか検証した()。海外のインターネット回線の通信速度でも十分な品質の映像を配信できることを確認した。

 セキュリティについては、Watershedの機能を利用した。WatershedはURLを基にアクセスを制限する機能がある。これを利用して、同社のWebグループウエア内からしか、生中継のサイトにアクセスできないようにした。

出典:日経コンピュータ 2010年9月15日号 pp.86-87
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。