NTTドコモは、同社が提供するLTE(Long Term Evolution)端末について「サービス開始の2010年12月時点で、データ通信専用機種を発売する。音声通信が可能な、いわゆる携帯電話型端末については2011年度冬春モデルで発売する」としている(図1)。機種の仕様や端末数などの詳細についてNTTドコモは一切明かしていないが、これまでの開発経緯をみるとExpressCard型端末とUSBドングル型が有力だ。

図1●NTTドコモの端末投入計画
当初投入するのは、ExpressCard型とUSBドングル型のデータ通信専用端末。ハンドセット型端末の投入は2011年度冬春モデルに予定されている。
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 2009年10月にスイスのジュネーブで開催されたイベント「ITU TELECOM WORLD 2009」の展示会場で、NTTドコモはLTE対応端末を出展した。このとき展示した端末は、富士通製のExpressCard型と、韓国LG電子製のUSBドングル型の2機種だった。

 2010年7月中旬に東京都内で開催されたモバイルの専門展示会「ワイヤレスジャパン2010」でも、富士通がLTE対応端末を出展した。形状などが分からないようにパソコンの一部は覆われていたが、ExpressCard型とみられる。

当面の製品化は「カテゴリー3」の端末だけ

 LTE規格を策定する3GPP(3rd Generation Partnership Project)は、前回の表1で示したように、通信速度に応じて5種類の端末カテゴリーを設けている。規格上は下り方向について最大300Mビット/秒のカテゴリー5が用意されているものの、半導体メーカーのチップ開発状況をみると、今後数年間に登場する端末はカテゴリー3対応だけになりそうだ。

 実際、クアルコムが2009年からサンプル出荷を始めたLTE対応の通信チップセットはカテゴリー3対応品。NTTドコモが、NECカシオモバイルコミュニケーションズ、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、富士通と共同で開発する「LTE-PF」もカテゴリー3に対応する(表1)。

表1●半導体メーカーの動向
商用サービスの開始に合わせ、各社の動きが活発になっている。
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 同じカテゴリー3でも周波数幅に応じて通信速度の上限が変わるが、製品としては端末への実装がしやすい10MHz幅対応品が中心になりそうだ。最大75Mビット/秒の通信が可能となる。最大性能を引き出せる15M~20MHz幅対応品は、確保できる周波数と実装面でのハードルが高い

クラウドの台頭で端末の多様化が進む

 「LTEの広がりに伴い、モバイル端末は“シンクライアント型”に変わるだろう」というのは、組み込み技術に強いブリリアントサービスの杉本礼彦代表取締役だ。データの保存だけにとどまらず、多くのコンピューティング処理を、クラウド側が担うようになるという指摘だ(図2)。

図2●端末構成が大きく変わる?
LTEの登場でモバイル端末のシンクライアント化が一気に進むとの予想がある。音声認識や画像処理など、負荷が重い処理はサーバー側が担う。
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 「モバイル端末の機能は、各種センサーと表示機能、そして簡単なコントローラーだけで済む。コンピューティング処理をクラウド側が担えば、消費電力が減ってモバイル機器の稼働時間も長くなる」(杉本氏)というのはLTEの浸透度が見えない段階では絵空事かもしれないが、音声認識や画像処理など一部では既にクラウド側で各種のコンピューティング処理を担うモバイル機器向けサービスが登場している。

 これまでの端末開発では、サービスの使い勝手を上げるために端末自体の性能を高めてきた。今後は「クラウド側で多くの処理を肩代わりするから、最高性能を持つ最新のプロセッサでなくていいという要求が増えるだろう」(ルネサスエレクトロニクス SoC第二事業本部モバイルマルチメディア事業部の吉岡真一事業部長)と見込まれている。端末形状の多様性はもちろん、クラウド側のサービスを生かすことで処理性能についても多種多様な端末が登場するだろう。


出典:日経コミュニケーション 2010年9月号 pp.12-33
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。