IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ダメな“システム屋”上司の提案前アドバイス
ダメな“システム屋”の会話 部下 「以上で提案書の説明を終わります。ご指導お願いします」
ダメな“システム屋”上司 「あのなあ、平凡なんだよ!インパクトがないんだなぁ」
部下 「そうでしょうか?」
ダメ上司 「まず、クラウドって言葉がどこにもないだろ。とりあえずクラウドって言葉を入れろよ」
部下 「しかし、この提案はクラウド・コンピューティングとは違いますけど?」
ダメ上司 「だから、そんなことはいいんだよ。どうせ、誰も正しく理解していないんだし」
部下 「いや、しかしそれでは提案にならないような・・・」
ダメ上司 「あと開発受託みたいな表現があるだろ。あれはSIとしとけや」
部下 「しかし、今回の案件では、システム・インテグレーション(SI)は我々の役割ではありませんよね?」
ダメ上司 「だーかーらー、そんなことはいいんだよ。とにかくキーワードを入れとけ。あとCRMとSFAはどっちが受けるかな」
部下 「今回の情報システムの目的は顧客サービス品質の向上ですから、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)とか、SFA(セールスフォース・オートメーション)でもないかと」
ダメ上司 「分かってないなあ、お前は。品質が上がればカスタマーが喜ぶだろ。だから、“論理的に”考えたらCRMってことになるだろうがっ!」
部下 「・・・“論理的に”、ですか・・・(ため息)」

ダメな理由:顧客をシラケさせ、信頼を失う

 前回の新しい技術をこき下ろす“残念な”先輩とは逆に、今回は、新しいキーワードに考えもなく飛びつくダメな“システム屋”について書きます。

 IT業界では、主に米国から一定の間隔で流行がやってきます。これに便乗することで、何となく付加価値が高いような演出ができるように思えます。顧客がまだ流行について詳しく知らなければ、“煙に巻く”ことだってできるように思えます。

 バズワード(buzzword)という言葉があります。一見、学術的な専門用語に見えるものの、実は厳密な定義や社会的合意がないまま、それを使うと得する人たちがこぞって使うことで流行する言葉のことです。その言葉を使えば賢く見えるとか、情報通に見えるとか、世間から注目が集まるとか、提案書のレベルが上がったように錯覚させられるとか・・・。こうしたことで得する人たちがたくさんいるために、次々に新しい言葉が流行します。

 “システム屋”は、新たな流行が、自分たちができることとは少し異なる場合でも、厳密な定義がないのを良いことに、勝手に解釈してとにかく流行に便乗することを優先します。

 「クラウド・コンピューティング」が流行しそうな兆しが出てきた時、“システム屋”として自分たちでできることに「クラウド」という言葉を無理矢理あてはめるのです。私は「プライベート・クラウド」はクラウド・コンピューティングとは本質的に異なるものだと考えていますが、「プライベート・クラウド」という言葉を使う人たちは、流行に便乗することを優先しているのでしょう。

 私が若手“システム屋”だった20年ぐらい前には「システム・インテグレーション」というバズワードが流行しました。もともと米国で、様々な種類のパッケージシステムが数多く出回っている時に、これらを矛盾なく統合(integrate)して、全体として正しく動くようにすることを指しています。

 SIは、Systems Integrationというように、複数のシステム(ズ)を統合するという意味だったはずです。私は、パッケージが普及していない日本では米国のようには広まらないと“論理的に”考えていました。ところが、従業員100人以上のほとんどのソフト会社が「自分たちはインテグレーターである」と宣伝し、通商産業省(現・経済産業省)の「SI認定」を申請したため、誰でもみんなインテグレーターになってしまいました。

 申請の数があまりに多いためか、経済産業省は2003年度から「認定」制度を「登録」制度に改め、どの企業もシステム・インテグレーターを名乗りやすくなりました。つまり、SIという言葉は、差異化を全く意味しないものとなり、あってもなくてもよい言葉となってしまったのです。ちなみに、例年は11月に登録申請を受け付けますが、今日時点で経済産業省のウェブサイトには「廃止を含めた検討を行っているため、例年の9月申請要領公表、11月申請受付のスケジュールは見合わせる」との表示があります。

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