この記事は,日経ソフトウエア2008年12月号に掲載した「ニコニコ動画開発記(耐)」の再録です。記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります。
鈴木 慎之介(すずきしんのすけ)
ドワンゴ 研究開発本部 研究開発部 担当部長
鈴木 慎之介(すずきしんのすけ) 昨年から趣味でスキューバ・ダイビングを始めました。遠いと思っていた沖縄も佐渡も,ダイビングに行くと思うとなぜか近く感じます。海からインスパイアを受けつつ,ニコニコ動画を作ったり作らなかったりする日々を過ごしています
http://d.hatena.ne.jp/shinno/

 ごぶさたしております。ドワンゴの鈴木慎之介です。

 また誌面をお借りして,筆者らが開発する動画共有サイト「ニコニコ動画」の開発について書くことになりました。今回と次回の2回にわたって,2008年10月1日にリリースした「ニコニコ動画(秋)」までの開発を記していきます。ニコニコ動画をご存知の方はもちろん,そうでない方も,あるWebサイト開発に携わるいちエンジニアの奮闘記としてお楽しみいただければ幸いです。

 さて,本連載の前回はちょうど半年前,本誌2008年6月号に最終回として掲載されました。それまでの4回で,プロジェクトのスタートから,ニコニコ動画(SP1)までの開発を記してきました。

 その後ニコニコ動画は,2008年7月5日に「ニコニコ動画(夏)」*1を,2008年10月1日に「ニコニコ動画(秋)」をそれぞれリリースしました。連載復活の第1回目となる今回は,(SP1)の開発後から,(夏)のリリースまでの開発の様子を記していくことにします。

 相変わらず,ばたばたした忙しい日々でした。そして,辛く,耐える日々でもありました。

目玉はコミュニティとコモンズ,さらに…

 ニコニコ動画の開発は,実装したいアイディアとそれを実装する力のせめぎ合いです。あれをやりたい! これはこうしたい! 様々なアイディアが社内外から噴出します。

 でも,すべてを実装するわけではありません。そのアイディアをよく吟味する必要があります。よいアイディアだったとしてもすべて開発する開発力はありません。会議をして,どれをいつごろ提供するかを決めていきます。

 このような会議の結果,ニコニコ動画(夏)でリリースした新機能が表1です。目玉となる新機能は二つ。一つは「ニコニコミュニティ」で,もう一つは「ニコニ・コモンズ」です。

表1●ニコニコ動画(夏)の主な機能
[画像のクリックで拡大表示]

 ニコニコミュニティは,ニコニコ動画を視聴するユーザー間の交流を促進するためのものです(図1)。コミュニティの参加者のみでの,動画の投稿,再生,コメント書き込みなどの機能を提供します。特定の興味があるユーザーたちに集まっていただいて,より濃厚にニコニコ動画を楽しんでいただこうというものですね。

図1●ニコニコミュニティのトップ画面能

 ニコニ・コモンズは,「自分の作品を広めたい人」と「既存作品を使って新しいモノを作る人」とを結ぶサイトです。目的は,作品の普及や登録作品を利用した新たな派生作品の創作が促進され,創造的な活動が進んでいくこと。写真や音声など,動画の素材になるものはなんでも共有できます。その際,作品の利用条件を明確にしてもらいます。ユーザーの動画作成上で悩ましい権利関係をクリアにするために重要な役割を担っている機能です。筆者とは別のチームが開発しました。

 ほかにも細かい機能アップなどがたくさんありました。表1をざっと眺めていただけると幸いです。

 さて,これら(夏)の新機能,新コンテンツすべてを紹介するのは,誌面の都合上難しそうです。以下では筆者の思い出深い出来事に絞って,その開発の様子を振り返ってみましょう。

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