国際競争力を持つ日本の産業はいずれも、ユーザーの厳しい目に鍛えられて成長してきました。自動車や精密機械だけでなく、素材、食品、小売りなど、いずれもユーザーである消費者・企業と供給者の双方の“こだわり”が、高い品質を実現してきました。

 産業ばかりでなく文化であっても、和食、ラーメン、ゲーム、漫画、アニメーションなど、日本発で海外で広く普及しているものは、いずれも厳しいユーザーに鍛えられて育ったものばかりです。

 ところが情報システム、特に企業や団体が利用する業務システムの品質はどうでしょうか。日本発の業務ソフトウエアが国際競争力を持つという事例は少なく、“ユーザー企業”が優れた情報システムを活用することによって国際競争力を獲得したという事例も数えるほどしかありません。

 この連載『ダメな“ユーザー企業”を叱る!』では、我が国の情報システムが競争力向上につながらない原因を、“ユーザー企業”側の問題と、担い手側の問題に分けました。そのうえで、前者の課題を整理し、“ユーザー企業”に向けて、発想の転換を含めたいくつかの提言をしてきました。2009年11月に第1回を掲載したこの連載も今回が最終回です。これまでに述べてきたことを振り返りながら、まとめとします。

発想を固定化する負のスパイラル

 情報システムの担い手であるIT(情報技術)ベンダー、システムインテグレーターを私は“システム屋”と呼んでいます。企業としての“システム屋”の組織は、多くの場合、業種別の編成になっています。これは、“ユーザー企業”の要求が業務知識であり、それに応えようとしてきたからです。

 「“システム屋”には業務知識が必須」とはよく言われますが、それ自体が目的、目標になっては本末転倒です。今の日本で、業種固有の知識、慣習、発想だけで戦える“ユーザー企業”はほとんど残っていないはずです。

 高度経済成長期に、日本経済全体の成長に呼応して成長してきた業種、業態、企業が、自らの構造改革に挑もうと考えた時、IT活用を含めた改革を検討しているでしょうか。業種ではなく業態に着目して、異業種だが同業態のIT活用を参考としているでしょうか。業種という分類上の切り口ではなく、事業が急成長している時停滞している時市場が供給過剰あるいは供給不足の時など、事業のライフサイクルに応じてIT活用の目的を考えているでしょうか。

 残念ながら日本の“システム屋”の多数派は「ダメな“システム屋”」です。「業務を覚えろ」と言われて業務知識を身に付けてきた彼・彼女らは、言われたものを作り続けるようになります。特定分野の業務知識を習得すれば、あたかもそこがゴールだと誤解し、「ユーザー企業のレベルが低いからしょうがない」などとうそぶきます。

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