国民生活センターは2010年6月9日、光回線を使った映像配信サービスの勧誘でトラブルが急増しているとして、消費者に対する注意を呼びかけた。消費者に対して、サービスの必要性をよく考えてから契約するようアドバイスするとともに、電気通信事業者協会(TCA)とテレコムサービス協会(TELESA)に対して、契約内容や費用負担についての明確な説明と、解約手続きをスムーズに実施するなどの適切な消費者対応を求めた。

 今回国民生活センターが注意喚起したのは、光回線とテレビを専用端末で接続することで多チャンネルやビデオ・オンデマンド(VOD)を利用できるサービスについてである。ケーブルテレビや衛星放送サービスは含んでいない。国民生活センターによると、PIO-NET(全国消費者生活情報ネットワーク・システム)に寄せられた対象となる有料映像配信サービスに関する苦情は、2008年度が323件だったのに対し2009年度には1004件と、3倍近くに急増した。国民生活センターでは、苦情が増加している背景に「販売代理店が電話勧誘に力を入れていることがあるのではないか」と見ている。

分かりにくいキャンペーンとつながらない窓口

 国民生活センターは報道発表で、相談事例をいくつか紹介している。例えば「あるユーザーがインターネットを始めるために光回線事業者に紹介されたプロバイダに申し込んだ。すると事業者名がはっきり分からないが、映像配信サービスを勧める電話が何度もかかってきた。その際専用端末はレンタルできると聞いていたが、後日書面を見たところ買い取り契約になっていた。苦情を申し立てたが、事業者は購入するというやりとりの記録が残っているとして取り合ってくれない」というものや、「とりあえず1カ月無料なので使って欲しいと言われお試しのつもりで視聴した。1カ月経って連絡がなかったので、契約は成立していないと思っていたが、電話料金と一緒に視聴料が引き落とされていることに最近気づいた」といったものがある。

 こうした消費者からの相談内容から、国民生活センターは次のような問題点を指摘した。一つは、契約後数カ月の無料期間を強調することで消費者に有料サービスの契約をした認識がない点である。「契約を了承していないのに料金を請求された」という苦情が寄せられる原因になるという。また、「お試し」や「キャッシュバック」などの適用により、どのサービスに本来いくらの費用が発生し、実質費用負担がいくらになるのかが電話説明では分かりづらい点も問題とした。さらに、無料期間を設定しているために、料金の発生に気づいてから解約したいと思っても、クーリング・オフ期間が過ぎてしまっているケースがある点と、問い合わせ窓口が混雑しているために解約の申し出ができない点も問題という。問い合わせ窓口の混雑に関連しては、メールで解約を申し出ても返事がないケースも報告されており、こうした状態が続くことで消費者側が解約をあきらめてしまう懸念を示した。国民生活センターは「引き続き、光回線を利用する映像配信サービスについての相談状況を注視する方針」と説明した。

対象事業者が所属しない要望先には戸惑いも

 一方、今回国民生活センターから要望を受けたTCAとTELESAは対応に苦慮している。通信事業者らが参加する両団体にとって、映像配信サービスは通信サービスの上で提供する多くのサービスの一つに過ぎない。また通信とは別の事業者が提供するものも多く、ほとんどの会員事業者は直接手がけていないためである。

 TCAは今回の要望に対して、会員企業に要望があったことを文書で伝えた。ただし、内部には「国民生活センターのリリースに要望先として掲載されたことで、一般消費者がTCAを映像配信事業者の取りまとめ団体だと誤解しないか心配。対象となるサービスを提供している事業者に直接要望した方がよかったのではないか」という意見もあるようだ。

 TELESAは、具体的な対応については総務省と相談して決める方針だという。ここでも内部には「具体的にどのサービスで問題が起きているのか分かれば対応の取りようもあるが、そうした情報は提供されていない」と、違和感を持つ考えがあるようだ。  国民生活センターでは、今回具体的なサービス名を公表していない理由として「今回のトラブルはサービスの契約に関するもので、サービスが利用できないとか、品質が悪いといったサービスそのものに関するものではない。そのため、事業者やサービス名は公表していない」と説明した。

出典:日経ニューメディア 2010年6月21日号 14ページより
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