ここまで,システム運用,保守・維持管理,移行と運用要求の中でも特に重要なものを説明してきたが,その他の主な運用要求について説明していきたい。

(1)研修
 新システムの本番稼働前に,エンドユーザーおよびシステム運用管理者に対して,トレーニングを行っておく必要がある。ここで注意したいのが,システム構築に伴う新システムの研修というのはベンダーが無料サービスとしてやってくれるだろうという誤解である。

 特に,中小企業などのシステム開発の経験が少ないユーザーでは,このような誤解をしてしまうケースが散見される。「新システムの研修なんて,1,2時間ユーザーを集めてさっとやればよいから,それくらいサービスでできるだろう」と考えてしまうのである。しかし現実には,研修の準備や実施にはそれなりの時間とコストが掛かり,ベンダーの立場からすれば研修を無償提供することは難しい。

 本番稼働後の初期クレームを減少させ,スムーズな業務の移行を実現させるためにも,きちんと研修の実施を計画し,要求として記述すべきである。また,特にエンドユーザー向けの研修は,ユーザーが自社で行おうと思えば可能な仕事である。業務の観点については,ベンダーよりも一日の長があるはずだからだ。コスト,講師や教材作成のリソースや時間の都合などを勘案して,自社でやるのか,ベンダーに委託するのか,あるいはベンダーと一緒に行うのか,などを検討し,要求として取りまとめるようにしよう。

[エンドユーザー向け研修]
 実際に業務で新システムを利用するエンドユーザー向けの研修の要求として重要なポイントは以下の2点である(図5)。

図5●エンドユーザー向け研修のポイント
図5●エンドユーザー向け研修のポイント

・なるべく多くのユーザー(理想的には全員)が受講できるよう,スケジュール調整を行い,複数回の研修機会を計画すること。 ・現行システム(旧システム)と新システムにおいて,どこが違うのかを明確に説明する。特に,単純な機能の違いだけではなく,業務のフローにおける違いをレクチャーできるようにすること。

[システム運用管理者向け研修]
 エンドユーザー向けの研修とは異なり,システム運用管理者向けのトレーニングはベンダーが講師となり,システム管理者が専門的な情報を教わることになる。この場合,ユーザー側のシステム管理者のエンジニアとしてのレベルが重要になってくる。ベンダーに対してはこのレベル感の情報を共有し,適切な研修を実施してもらうように要求を出そう。

(2)マニュアル
 マニュアル作成をベンダーに依頼する場合は,研修と同様に無償ではなく有償サービスとなることが多いので,その点をきちんと認識しなければならない。また,マニュアルはベンダー,ユーザーどちらでも作成しようと思えば作ることができるものなので,RFPできちんと要求しないと,提案に盛り込まれないことも多々ある。ベンダーとしては見積もりを少しでも安くするために,要求されなかったマニュアルは見積もり対象外としてしまうのだ。

 ユーザー側はそれに気が付かず,本番稼働間近になってマニュアルの必要性に気付いて「当然作ってくれるものだと思っていた」と言い出し,一悶着起こるケースが多いのである。RFP作成の段階で明確に自社で作成するという方針が決定している場合を除いて,ベンダーに委託する予定の場合,あるいは未定の場合は,必ず要求事項として記述しよう(図6)。

図6●主なマニュアルの種類
図6●主なマニュアルの種類

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