保守と維持管理に関する運用要求の具体的な取りまとめのポイントを見ていこう。保守と維持管理という用語は,ユーザーやベンダーによっては同じ意味で使われることもある。どちらもシステム運用を安定して継続的に行っていく上で,必要な処置を施すという意味である。

 ここでは便宜的に,「保守」はハードウエアや製品としてのソフトウエア(OS,データベースソフト,ミドルウエア,パッケージソフト本体やツールなど)に対してベンダーが有償もしくは無償にて提供するサポートやサービスを指すこととする。「維持管理」は,スクラッチ開発したプログラムやパッケージソフトのカスタマイズの部分などに継続的に手を入れ(追加開発や改変など),業務との親和性を維持するための作業の意味で用いる。

 保守料金や維持管理コストはランニングコストとして,システムが稼働している期間はずっと発生する。システムを5年~10年使うとなるとかなりの金額になり,7,8年以上となると,システム構築時のイニシャルコストよりもランニングコストの合計のほうが高くなることが多い。従って,システムの安定運用の面からだけでなく,コストの面からも保守・維持管理に関してはきちんと要求を洗い出し,まとめるべきである。

[ハードウエアの保守]
 ハードウエアの保守に関しては,通常は黙っていてもベンダーは見積もりに入れてくる。ただし,運用要求で何も要求を出さないと,保守の内容や対象範囲などを明確にせず,ただ「保守料金一式いくら」と書いてくる場合がある。これでは,どのような保守サービスが提供されるのか分からず,実際に運用が始まってからもめる要因となる。

 ハードウエアの保守でポイントとなるのは以下の点である。

・サポート受付時間
 最も一般的なのは,平日の9時~17時など,営業時間の範囲で受け付けるというものである。それに対して土日も含めた24時間365日対応というのが最も手厚い保守サポートとなる。サポート時間は当然コストに大きくかかわってくる。

・故障への対応の仕方
 上記のサポート時間帯と同様にハードウェア保守の重要な要求項目として,「故障したハードウェアをいつ,どこで修理するか」がある。大きく分けるとオンサイト対応とセンドバック対応に分かれる。

 ─オンサイト対応  ハードウエア障害と判明した後,保守エンジニアがその故障ハードウエアの設置場所に出動し,その場で修理・交換などを行うサービスである。保守コストは高額になる。サポート時間との組み合わせにより,24時間365日であれば,即時対応となる。9時~17時の契約の場合,17時以降の連絡であれば翌日(金曜日の18時に連絡したら翌週の月曜日)の9時以降の対応となることを念頭に置きたい。

 ─センドバック対応  故障したハードウエアをベンダーの修理センターに送り,そこで修理・交換後に設置場所に送り返して再設置する。送付→修理→返送に数日を要する。従って障害発生時の代替機などの対策を採っていない場合は,その間全くシステムが利用できないことになるので注意しておく。

・保守の対象
 サーバーやストレージ,ネットワーク機器など,重要かつ高価なハードウエアに関しては十分な保守契約を締結すべきである。だが,ベンダーによってはモニターやキーボードなど安価なハードウエアに対しても保守契約を提案してくる場合がある。もちろんこれらの安価なものに対する保守契約が一概に悪いわけではないが,予備機を用意したり,買い替えたりした方がよりリーズナブルでかつ迅速に対応できる場合も多いので,その点は念頭に置いたほうがよいだろう。

[ソフトウエア(製品)の保守]
 ソフトウェアの保守に関してはハードウエアと同様のサポート時間の選択肢はあるものの,基本的にはベンダーからのバージョンアップやパッチ適用(バグなどの対応を行うソフトウエアの変更)のサービスに対するコストであり,ユーザーからあまり要求を出す事項はない。

 一つ注意すべき点は,トラブル発生時や質問などの問い合わせがインシデント制という有償サービスであり,基本の保守契約では限られたインシデント回数しか保証されていないようなケースもある。「どのようなソフトウエアサポートが提案されているのか,サービス内容とコストの明細を提示すること」という要求を出すようにしたい。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)は12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら