本研究所では、アジャイル開発を素材に、より良いシステム開発のあり方を求めていきます。モデリングや設計などを学ぶことは大切ですが、開発手法そのものを見直すことが必要です。それは、より良いシステムを作るだけではなく、開発を担当するチームが成長し、個人の満足度も高まると考えられるからです。今回は、2010年4月に参加したアジャイルのイベント「Agile Japan 2010」の様子と、そこから私が得たことを紹介します。

 2010年4月9日と10日に開催されたAgile Japan 2010に参加してきました。プログラムには、興味深いセッションや実際の体験を通して理解できるワークショップなどがありました。Agile Japan 2010の詳細については、Webサイトから資料がダウンロードできますので、そちらを参照してください。

アジャイルの主要要素「スクラム」は日本発だった

 1日目のキーノートセッションは、野中郁次郎氏でした。「スクラム」という言葉は野中氏が最初に使い始めたのだそうです。それが海外でシステム開発にも利用され日本に逆輸入されたという経緯があります。私は、スクラムは海外で生まれたものだと思っていたので驚きました。

 野中氏の講演は、熱意がとても伝わってきて、あっという間の1時間でした。私が面白いと思った言葉がありました。「Belief」です。日本語では「信念/思い」という言葉が使われていました。

 「信念」とは、個人の問題意識や価値観のことです。これが仕事へのモチベーションを維持し続けるために必要だという指摘です。人間には客観性というものはなく、すべては個人の主観からしか物事をとらえられないため、人は他人と真正面から付き合うことによって相互主観性が生まれる。この相互主観性が、創発を起こす組織づくりには必要だとのことでした。

大学時代の研究室も相互主観性が存在していた?

 野中氏の話を聞いていると、私の大学時代を思い出します。私が所属していた研究室は、単位のためでもなくお金のためでもなく、それぞれが何らかの「信念」を持って活動していました。自分を成長させたいという学生もいれば、おもしろいことをやってみたいという学生もいたと思います。

 学生それぞれが異なる目的をもっていましたが、プロジェクトに関わると「何が何でもプロジェクトを成功させたい」とか、「学生が自由に活動できる場を維持したい」という気持ちが強く表れ、それがチームの行動力へとつながっていきました。学生にとっては決して甘くなく厳しい環境でしたが、充実していてやりがいがありました。

 現在の私も、高いモチベーションがある人々に囲まれ、支援や刺激を受けながらの毎日を送っています。ただ、このような環境が広く一般的に広まることは無理なのではないかと考えていました。会社という組織の中では、別のことに重きを置いている人がいることを容易に考えられるからです。

 しかし、講演によって、数十年前の製造業でも、こうした環境の実現が可能だったということを知らされたのです。そして、このようなことを、きれいごとではなく、必要だと強く語ってくれる人がいることに嬉しさも感じました。

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