ラジオ放送事業者の音声コンテンツの有料配信サイトが2010年4月5日にオープンした。TBSラジオ&コミュニケーションズが運営する「らじこん」である。らじこんでは、ラジオ放送事業者が新たに制作した音声コンテンツや過去の放送番組を配信する。既にTBSラジオ自身が音声コンテンツの有料配信を開始しており、和歌山放送と秋田放送などの地方局も順次、同サイトでのコンテンツ配信を予定する。関東地域や関西地域のラジオ放送事業者からもTBSラジオに問い合わせが来ており、今後コンテンツを配信する事業者はさらに増えそうだ。

 TBSラジオは、全国のラジオ放送事業者のコンテンツを全国のユーザーに有料で提供する販路としてらじこんを活用する。ラジオ放送事業者は、自社の放送エリア外では番組を放送することができない。系列ネットワークを通じて全国に番組が流れる割合もテレビより低い。さらにラジオ放送は基本的に生放送であり、放送時間が過ぎると聴取者に番組を届ける手段がなくなってしまう。

 一方、インターネット上の配信ならば全国を対象に番組を配信できる。これにより、県域免許制度の下で行うラジオ放送では番組を届けることのできないエリア外で、新たな聴取者を開拓できるようになる。地域色の強いラジオ放送事業者のコンテンツを放送エリア外で聞きたいというニーズに対応する。「例えば広島県出身の人が東京都に転勤してきたら、広島のラジオ番組を聞きたいはず」(TBSラジオ 事業局事業部編成局編成部インターネットセンター担当 プロデューサーの塩山雅昭氏)という。「ほかのラジオ放送事業者には、全国向けのコンテンツでなくてもいいので、らじこんで配信してほしいと言っている」としており、地域色の強いコンテンツをより多く配信できる体制を目指す。ロングテール型のビジネスとしてこの事業を展開することをイメージする。

プラットフォームを低料金で他社に開放

 TBSラジオは、自社で開発したコンテンツ配信・プラットフォームを使い、らじこんのサービスを展開している。ほかのラジオ放送事業者は、決済代行事業者に支払う手数料などを負担すれば、TBSラジオのプラットフォームを使って音声コンテンツを有料配信できる。音声コンテンツが売れた場合、売り上げのうち7~8割がラジオ放送事業者の取り分となる。ほかのコンテンツ配信事業者のプラットフォームを使う場合、「ラジオ放送事業者の取り分は5割程度で、場合によっては3割程度になることもある」(TBSラジオの塩山氏)という。

 TBSラジオは、プラットフォームの開発費用を、「自社のコンテンツを売ることで回収する」としている。ほかのラジオ放送事業者が自社のプラットフォームを使いやすくして、らじこんのコンテンツを拡充し、Webサイトの集客力を高める戦略である。TBSラジオでは、今後ほかのラジオ放送事業者の利用の機運を盛り上げるため、「ラジオ放送事業者のデジタル担当者を対象にした勉強会を開いて、らじこんをアピールするべきではないか」などのアイデアも出ている。

 このようにTBSラジオは、らじこんをほかのラジオ放送事業者が使うことも前提にしている。TBSラジオだけではなく、ラジオ業界のコンテンツ配信プラットフォームにしたいと考えており、そのためにサービス名にTBSの冠を付けるのをやめた。WebサイトもTBSのドメインを使わず、新たにドメインを取得し開設した。

購入数などのデータを基にサービス強化へ

 TBSラジオは、コンテンツごとの購入数やユーザーが購入した時間、決済方法など、自社の有料配信プラットフォームを使うことで収集できる情報を活用して、らじこんとラジオ放送の連携強化や、ユーザーの使いやすさ向上を目指す。

 例えば、らじこんにおけるコンテンツのダウンロード数とコンテンツの購入時間を基に、有料配信サービスと放送の相乗効果を高める可能性を探る。具体的には、らじこんで芸人のフリートーク番組である「よしもと下克上」を配信する。芸人のうち、1カ月のダウンロード件数が一番多い芸人は、TBSラジオの番組で20分のコーナーを担当する。「番組の終了後、らじこんでその芸人の音声コンテンツのダウンロード数が増えるかもしれない。こうしたユーザーの動向を探り、サービスを強化していきたい」という。このほかに購入数から、ユーザーの支持を集めやすい音声コンテンツの傾向を探り、今後のラインアップの参考にする意向である。

出典:日経ニューメディア 2010年4月12日号 14ページより
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