大和証券グループ本社は、2011年中の開業をめざすインターネット専業銀行の情報システムを80億円以下で構築する。中核の勘定系システムにオープンソースソフト(OSS)のLinuxと安価なx86サーバーを採用し、さらに提供業務を絞ることで投資額を抑える()。銀行の勘定系システムは一般的に、メインフレームで構築する場合で200億円程度、オープンシステムだと100億円程度かかる。

図●大和証券グループ本社が開業をめざすインターネット専業銀行のシステム構成
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 Linuxを採用することで、OSにかかるライセンスコストを削減する。高い信頼性が求められる銀行の勘定系システムをLinuxで構築するのは国内では初めてだ。

 動作サーバーについては、富士通製のx86サーバーを導入する。大和証券は詳細を公表していないが、勘定系システムに使用することを考えると、ハイエンド向けの「PRIMEQUEST」を選ぶ可能性が高い。富士通は3月31日にPRIMEQUESTの新型機を発表。搭載プロセッサをItaniumからXeonに切り替えることで、価格性能比を従来の3~6倍に高めている。

 アプリケーションについては、新銀行の提供業務を「預金」と「為替」に絞り込んで開発費の増加を防ぐ。「融資」はせず、投資信託などの金融商品も銀行では扱わない。

 勘定系パッケージには、富士通の新ソフトを採用する。同ソフトは、ソニー銀行などで稼働実績がある「W-BANK」を基にしたものだ。W-BANKはSolarisで動作するが、富士通はこれをLinux向けに改修する。

 Linuxとx86サーバーの選択には、将来のシステム更改費を抑える狙いもある。OSSのLinuxと複数のサーバーメーカーが提供しているx86サーバーを組み合わせて使えば、ハード更改時に富士通以外のメーカーの製品を選ぶことができる。ハード調達に競争原理を働かせることが可能になるわけだ。メインフレームやUNIXサーバーを採用した場合はそうはいかない。アプリケーションに影響を与えずにサーバーを他社製品に切り替えるのが難しいからだ。

 大和証券が銀行を設立するのは、顧客である個人投資家の利便性を高めるためだ。例えば、個人投資家が新銀行の預金口座に入金すると、株取引などのための証券口座にも自動的に入金結果を反映できるようにする。同社はシステム開発を進めると同時に、4月1日に銀行設立準備のための子会社を設立した。

 多くの業種のシステムでLinuxの採用が進んできた一方で、金融分野のミッションクリティカルなシステムにLinuxを使うケースはまだ少ない。そうしたなか、今年1月には東京証券取引所がLinuxを採用した株式売買システムを稼働させた。大和証券がネット銀の勘定系システムにLinuxを選んだことで、Linuxの普及がさらに進む可能性がある。

出典:日経コンピュータ 2010年4月14日号 p.10
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