企業は、顧客のニーズや購買行動を分析することによって、新しい商品やサービスを創り出してきている。その際、企業のマーケティング担当者は様々なデータを用いる。現代のビジネスでは、勘や経験のみに頼るのではなく、データ(事実)に基づいて仮説・検証を繰り返し、科学的・論理的にアプローチすることによって、新しいビジネス(商品、サービス)のリスクをヘッジしていく。データは新しい商品やサービス作りにとって、重要な構成要素となっている。

 近年、新しいデータの創出によって様々なサービス・イノベーションが引き起こされている。例えばグーグルは、インターネットの普及に伴い生成される膨大なウェブ・ログ・データから、検索やキーワード広告など様々な技術やサービスを生み出し、巨大な産業を育て上げた。新しいデータは研究フロンティアを生み出し、その研究基盤をもとにした新しいサービスが多大な利益や雇用を創出している。

 そのサイクルは非常に短く、データの創出と研究開発、ビジネス化がほぼ同時並行で進むことが珍しくなくなってきている。今回は、新しいデータとともに生まれるビジネスについて、いくつかの先端的な取り組みを紹介してみたい。

購入プロセスへと向かうマーケティングの先端研究

 本稿では、購入プロセスへと関心が移りつつあるマーケティングの先端研究について、最も注目を集める研究領域をいくつか紹介しよう。

 最初にウェブログ(クリックストリーム)データに関するマーケティング研究が挙げられよう。ウェブログとは、インターネットユーザーがサイトを渡り歩いた履歴データであり、このデータを解析すれば、あるユーザーがどのようなページをどのように訪れたかが把握できる。

 最近のマーケティング研究(国際学術雑誌で扱われるような先端研究領域)では、このウェブ・ログ・データを用いたものが高い割合を占める。インターネットビジネスにおいて、どのようなプロセスを経て購入に至ったかを詳細に解析できるため、従来は得られなかった購入プロセスに関する詳細な行動モデルが明らかになってきている。

図1●購入プロセス
図1●購入プロセス
現在はブラックボックスであった購入プロセスが新しいデータ生成によって明らかにされつつある

 そのほかには視線に関する研究も興味深い。視線追跡のための機器が開発され、視線の軌跡を解析することによって、購入に至る人間の関心、そのプロセスをモデル化する研究だ。日本では、本委員会の大澤幸生委員がこの研究に取り組んでいる。小売店での購入、インターネットの利用方法、芸術鑑賞などその応用範囲は広い。既にいくつかの研究が発表されており、今後、日本でもその重要性は増すものと思われる。

 そして近年、RFID(無線ICタグ)などのセンサーネットワーク技術を用いた顧客動線研究が多くの関心を集めている。購買行動でブラックボックスであった店内の購入プロセスが、顧客動線データを収集することで明らかになってきたのだ。顧客動線研究において現在、世界的な研究拠点はペンシルベニア大学のウォートンスクール、そしてコロンビア大学ビジネススクールと私が所長を務める関西大学データマイニング応用研究センターの共同チームの2拠点が研究を先導している。今回は我々が所属する共同チームの研究成果をもとに顧客動線研究について概略を紹介しよう。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら