「実にいい時代になってきた。自分が開発したソフトウエアがいろいろな機器の上で動き,小さな会社でも世の中の進歩に貢献できる」(モバイル機器向けアプリを開発するベンチャー企業,ユビキタスエンターテインメントの清水亮代表取締役社長 兼 CEO)。

 米アップルのiPhoneや米グーグルのAndroidを搭載する携帯電話など新しいオープンなモバイル端末(スマートフォン)の登場(写真1)で,創造力や才能にあふれたソフトウエア開発者が活気付いている。例えば,米ビッグ・キャンバス創業者の増井雄一郎氏は「開発の自由度が高いAndroidは,人々の多様性を満たすプラットフォームだ」と語る。さらに,デザインが洗練され性能が高い魅力的なハードウエアの登場は,ソフトウエア技術者の開発意欲を刺激する。クリエイティブなソフトウエア開発者ほど「カッコいい端末の上で,自分が開発したソフトウエアを動かしてみたい」と言い,「魅力ある端末ほど,ユーザー像やユーザーの利用シーンがよく見えるので開発しやすい」と胸躍らせているのだ。

写真1●iPhoneが切り開いたスマートフォン市場を,Androidを搭載した端末が飛躍的に拡大させそうだ
写真1●iPhoneが切り開いたスマートフォン市場を,Androidを搭載した端末が飛躍的に拡大させそうだ

 これまでは,ある機器が搭載するアプリケーション・ソフトウエアを作ることができるのは,そのメーカー内の開発者や業務委託を受けた企業だけだった。そうした中,一部のメーカーやサービス事業者は積極的に製品やサービスの仕様を公開,自由で独創的な外部の発想を取り込むことに成功している。

 端末のオープン化は,通信事業者やサービス事業者にとって継続的な新サービス開発の土台となる。あるサービス事業者は「新サービスの自社開発には限界がある。継続的な成長を考えればオープン化は必然」という。豊富なアイデアを持つソフトウエア開発者と,消費者への流通チャネルや課金基盤があるサービス事業者やメーカーは,相思相愛の関係にあるのだ。エンドユーザーも,有益なサービスの充実によって恩恵を受けられる。

スマートフォンから多様なネット端末へ展開

 スマートフォンで火が付いたオープン化の流れは,カーナビゲーション・システム(カーナビ)やデジカメ,テレビなどほかの機器にも広がり,サード・パーティの開発者は様々なネット端末のアプリケーションを開発できるようになるだろう。オープンな環境が広がれば,複数の機器を連係させたサービスも提供しやすくなる(図1)。魅力的なハードウエアと独創的なソフトウエアが両輪となり,新しいワーク・スタイルやライフ・スタイルが生み出されることが期待できる。

図1●Androidで大きく変わるネットワーク環境
自由にアプリケーションを組み込める「ネット端末」が増え,サード・パーティが関与できる機能が増える。異なる機器間の連係も容易になる。
[画像のクリックで拡大表示]
図2●加速するダウンロード数
2008年7月のサービス開始以来,米アップルの「App Store」からのアプリケーション・ソフトウエアのダウンロード数は急増している。カッコ内はアプリ数。
[画像のクリックで拡大表示]

 “アプリをダウンロードできるモバイル機器”の源流は日本にあったが,その流れをiPhoneが全世界に広げた。2008年7月のアプリケーション配信サービス「App Store」開始からわずか2年半弱でアプリが10万,ダウンロード数が30億に達した(図2)。魅力あるハードウエアがソフトウエア開発者の創作意欲を刺激し,多くのアプリを流通させることに成功した例である。

 iPhone対抗とも称されるAndroidは,iPhoneよりも開発やビジネスモデルの自由度が高く,ソフトウエア開発者の創作領域はさらに広がる。例えば,iPhoneを製造できるのはアップルだけであり,メニュー画面などのユーザー・インタフェースはすべて統一されている。ソフトウエア開発者に対しても操作時のボタンの色反転の指定をはじめ,統一的な操作環境の提供を求めている。

 これに対してAndroidは,メーカーが自由にAndroidベースのスマートフォンを企画,製造できる。端末のユーザー・インタフェースすら,メーカーが好きに変えられる。

 Androidはマルチタスク処理が可能なので,バックグラウンドであるアプリを動かしながら別のアプリを動かすことができる。例えばGPS(全地球測位システム)受信機能を持つアプリを動かしておき,「東京の銀座に着いたら,行こうと思っていたレストランの情報を自動的に表示するサービス」が可能になる。