本研究所では、日本と海外のIT技術およびその利用方法を比較し、両者の間にある格差について考えている。IT業界に身を置いていると、つくづく疑問に感じることの一つに、人月計算の問題がある。今回は、グローバル化が進む中で、日本に限らず、世界に共通するプログラマに対する評価の格差について考えてみよう。

 過日、久しぶりに会った日本のクライアントと話をしていて「あっ!」と思うことがあった。それは、「西野さんのところは1人月いくらですか?」と聞かれたことだ。確かに、作業を担当する人の時給から1カ月当たりいくらになるのかは計算できる。それが分かりやすいので、一般的に使われているのだろう。

 会社を20歳そこそこで立ち上げたとき、発注元のある企業の部長さんから、「何人月くらいかかる?」と言われ、“キョトン”としてしまったことを今も鮮明に覚えている。私自身がプログラムを書けば3日だけど、普通の人がやれば1カ月くらいかなと思い、「1カ月です」と答えたら、その部長さんは、「たったそれだけ?」と驚かれていた。誤解があるといけないので敢えてコメントするが、これは純粋にプログラムを書くだけの仕事である。

 図1に、ソフトウエア構築の進め方として一般的な示すウォーターフォールモデルを示す。ここでは、いくつかの工程を経てシステムが完成する。ただ日本では、システムを発注する企業の多くが、あまりに「何に時間とお金がかかっているのか」を分かっていないのではないかと感じることが少なくない。

図1●ソフトウエア構築におけるウォーターフォールモデル
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 ここでは、時間について考えてみよう。筆者は明確な数値は持ち合わせてないが、システム構築において、企画・要件定義・設計、プログラミング、テストという工程の全体を10とすれば、プログラミングにかかる時間は5割以下だと考えている。実際にはテストに要する時間が比較的大きなウエートを占めているはずだ。

 ところが、私が出会った多くのクライアントは、プログラミングそのものに時間がかかっているととらえているようである。確かに、テストによってバグが見つかれば、修正したり、あるいは機能を追加したりするためのプログラミングが必要になる。だが、これらのプログラミングは、テスト工程に含めるものとして考える。本稿で筆者がいうプログラミングは、あくまでもシステムの元となるプログラムを作成する作業を指している。

3週間でサービスインしたエコポイントのシステム

 一方で最近は、「システムが完成するまでのスピードが早くなってきたようだ」といった感想を持つクライアントが増えている。先頃も、日本政府が提供する「エコポイント」のシステムが、米セールスフォース・ドットコムの基盤サービスを使うことで、わずか3週間ほどでサービスを開始できたことが話題になった。

 なぜ、日本中で使うようなシステムが3週間で構築できたのか?報道などによれば、エコポイントの総予算は約3000億円である。環境省、経済産業省、総務省は、事務局のシステム関連費用を含む申請処理などの業務費として3年間で57億4000万円を見込んでいるという。このうちのどれだけが、セールスフォース・ドットコムに支払われているのかは定かではないが、決して安くはないのだろう。

 エコポイントにおけるセールスフォース・ドットコムの利用例は、同社が提供する基盤システムの存在が大きい。これは筆者の推測だが、エコポイントシステムが3週間で実現できたのは、発注者が要求する機能のすべてが、セールスフォース・ドットコムの基盤サービスにそろっていたためだと考えられる。

 また、この手のシステムは、ユーザーが使うフローが可視化しやすいという点も、3週間という短期間でサービスを提供できた一因ではないだろうか。ただ、他のシステムとの接続がある場合は、やはりカスタマイズが必要になるため、新たなプログラム開発が必要になる。

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