2009年12月10日,今後のICT政策について議論するICTタスクフォースは,各通信事業者への合同ヒアリングを実施した。ヒアリングには各事業者のトップが参加し,それぞれ意見を述べた。国際競争力など幅広い議論に進展させたいという民主党政権の狙いとは裏腹に,話題はNTT組織問題に集中した。

 「NTT再編を議論する場だったはず」,「持ち株会社の下での分割は意味がない」,「アクセス部分とそれ以外での会社分離もあり得るのでは」──。

 今回の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」(ICTタスクフォース)の公開ヒアリングは,競争政策を議論する第1部会と,電気通信市場の環境変化への対応を議論する第2部会が合同で開催したもの(図1)。参加した事業者のトップがそれぞれの考えを述べた(写真1)。

図1●合同ヒアリングで通信事業者各社が意見陳述
2009年12月10日にICTタスクフォース第1部会,第2部会合同の公開ヒアリングが開催され,NTT,KDDI,ソフトバンクなど通信事業者が今後議論すべき内容について意見を述べた。
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写真1●NTTの三浦惺社長(右端),KDDIの小野寺正社長兼会長(中央),
 ソフトバンクの孫正義社長(左端)など通信事業者のトップがそろった。
写真1●NTTの三浦惺社長(右端),KDDIの小野寺正社長兼会長(中央),ソフトバンクの孫正義社長(左端)など通信事業者のトップがそろった。

 ヒアリングの場では,NTTが「ネット時代」,「国際展開」を視野に入れた柔軟な政策を求めた。ところが,部会の委員がNTT組織論に話を向けると,議論は急に熱気を帯び,他の通信事業者からは,「競争政策が不十分」,「かつて閣議決定されたNTT再編の議論は必要」などの意見が相次いだ。

 さらに各事業者は,「FTTH回線でNTTの寡占が解消されていない」,「ユニバーサル・サービスが不透明」と,いった問題を提起した。

NTT問題からのすり替えを懸念

 各通信事業者がNTTの規制や再編の必要性を強く訴えた理由は,タスクフォースでの議論に対し,NTT問題から矛先をそらすつもりなのではないかとの懸念を抱いているからだ。

 11月30日の第1部会では,ICTタスクフォースを主導する総務省の内藤正光副大臣が「NTT再編だけを問題にするのではなく,もっと大きな枠組みで考えるべき」と発言。さらに「電気通信事業だけに限定せず,米グーグルや米アップルが手がけているような成長著しいコンテンツやサービスの分野を含めた包括的な議論をしてほしい」と要請した。

 NTTもこの方向性に同調。12月10日の合同ヒアリングではNTTの三浦惺社長が,「従来は音声中心で,NTTとの接続のあり方を中心に議論していたが,最近は端末やコンテンツの分野で海外のプレーヤが入ってきた。電話中心のルールを見直すときが来た」として,電気通信事業だけでなく,ICT業界の全体像を議論すべきと主張した。

 これを聞いたほかの事業者は,「NTTは国際競争に話をすり替えて,国内の議論(NTTの組織問題)を避けようとしているのではないか」(ソフトバンクの孫正義社長)と反発。議論の方向転換を迫った(図2)。

図2●合同ヒアリングの中で議論された項目と各社の主な発言
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 NTTの組織問題についてのKDDI,ソフトバンク,イー・アクセスの3社の主張は,持ち株会社の下で分離しても,競争促進の意味はないというもの。例えばKDDIの小野寺正社長兼会長は,「競争相手であるはずのNTTコミュニケーションではなく,NTT東西がNGN(次世代ネットワーク)網を持っている」ことなどが,実質的にはNTTが分離されていない証左であるとして,NTT組織問題をしっかり議論すべきだと述べた。

 イー・アクセスのエリック・ガン取締役も,「健全な競争のためには,NTTのアクセス設備を分離して,MVNO(仮想移動体通信事業者)のように平等な形で,ほかの事業者が利用できるようにすべき」と持論を展開した。

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