著者:日本OSS推進フォーラム
デスクトップ普及戦略検討タスクフォース 主査 飯尾淳

 オープンソース・ソフトウエア(OSS)のデスクトップ・アプリケーションを利用するにあたって心配されることに、データの互換性問題があります。OSSのデスクトップ・アプリケーションでMicrosoftアプリケーションのデータをあつかう際に表示が崩れたり、正常に動作しなかったりというケースは、少なくなってきてはいますが、現在も皆無ではありません。今回は、このデータ互換性問題の改善に向けた取り組みを、2つ紹介します。

Webアプリケーション非互換問題の解決を図るPirka'r

 Internet Explorer(IE)で利用できるが、FirefoxやChromeで利用できないというWebサイトは数多くはありませんが、存在します。日本OSS推進フォーラムのデスクトップ普及戦略検討タスクフォースがまとめた「OSSデスクトップ普及を阻害する要因の分析と解決に向けた取組みの提案」でも阻害要因のひとつとして指摘していますが、IE用しかないプラグインを使用したり、IEしか解釈できないHTMLタグを利用したりすることが原因です。

 しかし、このような問題は、IEと他のブラウザとの間だけで起きていることではありません。IEやWindowsのバージョン間でも存在します。最近では、大阪府電子調達システムの動作保証対象がIE7とIE6のみので、IE8は対象外になっていることが話題になりました。

大阪府電子調達(電子入札)システム パソコンの環境設定

 対策は、ブラウザ固有の機能に依存しないWebサイトを作成することです。連載第2回の記事では、特定のWebブラウザに依存しない社内システムを構築してきた住友電工の事例を紹介しました(「住友電工のシステムが特定のブラウザに依存しない理由」)。特定ブラウザに依存しないことで、ブラウザやOSのバージョンアップをスムーズに実施できています。

 このような、特定のブラウザに依存しないWebコンテンツを作成するためのツールが、昨年オープンソース・ソフトウエアとして公開されました。Pirka'r(ピリカル)と呼ぶツールです。Pirka'rは、HTML/CSS/JavaScriptにブラウザに依存する記述がないかチェックする機能、マルチブラウザで一度にプレビューする機能、コードの編集支援機能などを備えています。

Pirka'rのブラウザ互換性チェック機能
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Pirka'rのマルチブラウザビュー機能
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 それだけでなく、日頃のWeb開発で発見されたブラウザ間の非互換問題をデータベースに集積し、開発者に提供します。HTMLやCSS、JavaScriptの非互換問題はこれまで、半ば伝承的に開発者間で伝えられてきましたが、Pirka'rはそれをデータベース化することで、誰でも利用できるようにしました。

 Pirka'rは、情報処理推進機構(IPA)のオープンソフトウェア利用促進事業の一環として、株式会社グルージェントにより開発され、Seasarコミュニティに支えられています。デスクトップ普及戦略検討タスクフォースによる「OSSデスクトップ普及を阻害する要因の分析と解決に向けた取組みの提案」も、Pirka'rが開発されるきっかけのひとつになったといえるのではないかと思います。

Pirka'r公式サイト

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