Webサイトなどで有名人の氏名・肖像を無断で利用すると,「パブリシティ権」の侵害になる。今回は,このパブリシティ権の法的根拠について解説したい。損害賠償や差し止め請求を受けないためにも,しっかりと理解して欲しい。

 実在する競走馬の名前を使う競馬シミュレーション・ゲーム「ギャロップレーサー」を開発・販売しているテクモに対し,競争馬の名前を無断で利用された馬主らが,ゲームソフトの制作,販売,貸し出しなどの差し止めと損害賠償を求めて,1998年に名古屋地方裁判所に訴訟を起こした。「競走馬の名前が持つ顧客吸引力などの経済的価値を馬主が独占的に支配する財産的権利(パブリシティ権)をテクモが侵害している」というのが,馬主側の主張だった。

 名古屋地方裁判所は,有名な競走馬の名前に関しては馬主たちにパブリシティ権があると判断してテクモに損害賠償を命令。これを不服としたテクモは控訴したが,名古屋高等裁判所も2001年に同様な判決を下した。

 裁判で「パブリシティ権は人については認められるが,物については認めるべきではない」と主張していたテクモは,ただちに最高裁判所に上告した。最高裁は,

(1)馬主による競走馬の所有権は,物としての馬の排他的支配権にとどまり,名前などの無体物を排他的に支配する権限までは含まない。このため,顧客吸引力などの経済的価値を持つ競走馬の名前を第三者が利用したとしても,その行為は競走馬の所有権を侵害するものではない

(2)物の名前など無体物の利用に関しては,特許法や著作権法,不正競争防止法などの知的財産権法が,排他的な使用権の及ぶ範囲・限界を明確にしている

(3)競走馬の名前の使用権については法的な根拠がないため,馬主に排他的な使用権を認めることは適当ではなく,不法行為法(民法)に基づく救済も現時点では認められない

と判断。テクモの主張を認めて,控訴審(名古屋高等裁判所)の判決を破棄し,馬主らの請求を棄却した。(最高裁判所2004年2月13日判決,判例時報1863号25頁)

 ホームページやWebコンテンツなどで,俳優やタレント,スポーツ選手などの有名人の氏名や肖像(人物の顔や姿などを描いた絵や映像,写真,彫刻)を無断で利用すると,「パブリシティ権」の侵害になる。パブリシティ権とは,顧客を引きつける力を持つ有名人の氏名・肖像を,有名人自身が営業的に利用できる独占的な権利のことである。氏名に関する権利を「氏名権」,肖像に関する権利を「肖像権」と呼ぶこともある。

 パブリシティ権を侵害すると,損害賠償請求や差し止め請求を受ける可能性がある。今回は,このパブリシティ権の成り立ちと法的根拠について解説しよう。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら