宮下 啓子/情報通信総合研究所 主任研究員

 ブロードバンド環境が日常生活に深く浸透するようになり,ブロードバンド・ビジネスの焦点もインフラから認証システムや課金システムなどのプラットフォーム,そしてアプリケーションへと,よりユーザーに近い分野で盛り上がりを見せている。国のIT戦略でも,真のブロードバンド大国を目指して医療や教育,防災など生活に密着した分野のIT化を積極的に推進しているところである。

 ITを活用した教育といえば「eラーニング」。ここ数年,急激に動画の利用が広がっており,従来のようなテキスト自習型の学習だけでなく実習系の教育・研修などもeラーニングで実施可能となっている。動画マニュアルを企業の技術教育に役立てたり高度なシミュレーション技術を駆使した現場実習さながらの臨場感の高いもの(写真1)も登場している。

写真1●富士通の「フルハイビジョン実写映像可変速再生技術を活用した鉄道運転シミュレーションとeラーニングを連携させた学習システム」
第6回日本eラーニング大賞(2009年度)で経済産業大臣賞を受賞した。
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写真2●作成したコンテンツをiPhone(左)やAndroid搭載端末(右)に配信する「P4 Web mobile service」
撮影:ベンチャー・シーズチーム ライター 後藤恭子
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 また,動画教材や講義コンテンツの作成・配信をより簡単かつ便利にするシステムやASP(application service provider)サービスも充実してきた。その一つ,アーネットの「P4Web」は,講義映像や講師が使用したすべての講義資料をキャプチャしてeラーニング・コンテンツを自動作成する「P4Web vivid」や,作成したコンテンツをiPhoneやAndoroid搭載端末などスマートフォンに配信してユビキタス環境で学べる「P4Web mobile service」など,eラーニングの提供者にとっても利用者(学習者)にとっても使い勝手のよい製品を提供している(図1写真2)。

図1●アーネットの「P4Web vivid」
インストラクターがパソコンやプロジェクターなどで行った講義内容をそのままデジタル処理し,講義終了と同時に臨場感あふれるeラーニング教材が作成できる。
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一般ユーザーも動画で手軽に学習

 一方,ブロードバンドの普及でユーザーが動画を手軽に利用できるようになったことから,動画教材をまとめて低価格で使い放題にできる「動学.tv」のような一般向けのポータル・サービスも見られる。そのほか,英会話や学習塾ではPCベースのテレビ電話を使った対面型レッスンで個別指導が行われ,講義映像のライブ配信やオンデマンド配信は,学校教育から受験や資格取得などの実学,さらには趣味など生涯学習の講座まで幅広い利用が見られる。

写真3●NTTナレッジ・スクエアの「N-Academy」のトップページ
趣味から実用・ビジネスまで幅広いジャンルの講座をそろえ,著名な第一人者から直接指導を受けられる。クラス学習システムを採用し,クラスメートとのコミュニケーションを通じて楽しく学習を進められる。
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 NTTグループも,ブロードバンドを活用した有望なアプリケーション分野として教育市場に本格参入している。次世代ネットワーク(NGN)を基盤とした新たなサービスの開発やビジネスの創造を目指すビジネスフォーラム「次世代サービス共創フォーラム」を立ち上げ,その中でNGN時代にふさわしい教育ビジネスの創出を目指してIT業界,教育業界の関係者や有識者らを交えた討論や情報発信を行ってきた。その成果の一つとして,eラーニング・ベンダーであるデジタル・ナレッジと共同で2009年9月にコンシューマ向けeラーニング事業を行う新会社「NTTナレッジ・スクウェア」を発足。11月には,ブロードバンドを活用した高精細動画による双方向型の新しい教育サービス「N-Academy」を立ち上げた(写真3)。

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