最終回の今回は,これまでのおさらいをします。

 日本のデータセンターの始まりは,昔の逓信省が管轄する,電話交換局(現在は日本電信電話株式会社が所有)だといわれています。電話交換局とは,電話交換機が置かれた局舎のことで,単位料金区域(MA:Message Area)ごとに設けられています。

 電話は,今なお重要なライフラインの一つです。地震などの災害によって設備が損傷し,電話の利用が不能になることを防ぐため,電話交換局は一般的な建物に比べて強固な作りになっています。

 もし機会があったら,クロスバー交換機が使われていた当時に開設された,今となっては少々古めかしい電話交換局を眺めてみてください。目立たないように気を配っている一般のデータセンターとは異なり,NTTの看板が掲げられているので,探せば見つかるはずです。柱が太く,窓はないか,あったとしても小さくて,いかにも「少々の地震ではつぶれません!」といった堅ろうな建物であることが分かります。

常に電気の供給を絶やさない仕組みを備える

 電話交換局から始まったデータセンターは,時代に応じて必要とされる設備を拡充しながら発展してきました。1960年代からは企業や行政機関でコンピュータを用い,事務処理を自動化する取り組みが進み,それに伴って経営情報など重要な情報の記録先が紙から電子データに移りました。それと同時に,重要なデータを保管する場所が金庫からサーバーへと変化しました。

 紙の経営情報を盗難や火災,地震などから守るには,かつては建物に鍵の付いた強固な耐火金庫を据え付け,そこに収めるか,もしくは銀行の貸金庫に預けるのが一般的でした。そうした頑丈な金庫なら,たとえ建物が地震でつぶれたとしても,金庫の中身まではダメージがおよびにくいからです。しかし,経営情報がサーバー上に電子データとして記録されている場合は,サーバーを自社の金庫や銀行の貸金庫に収める,というわけにはいきません。電気が通じないと,サーバーは単なる箱になり下がってしまうためです。

 サーバーを含む情報機器は,ほんの一瞬でも電気が途絶える(瞬断が起こる)と,システムが停止したり,リブートが発生したりすることがあります。そのため,常に電気の供給を絶やさない仕組みが必要です。その仕組みを備え,かつ盗難や災害からサーバーを守れる場所がデータセンターなのです。データセンターでは一般に,瞬断の発生に備えて無停電電源装置を備えています。また,複数系統の商用電源を引いたり,自家発電装置を装備したりすることで,長期にわたる電源断が生じないように配慮しています。

ハウジングとホスティングはどう違う?

 サーバーなどの通信機器をデータセンターが預かるサービスのことを「ハウジング」といいます。利用者が機器を用意し,データセンターのラックに設置します。システム管理者は必要ですが,機器が正常か異常かを判別するためにLEDを目視で確認する,監視装置によって機器の不具合を調べる,データ・バックアップのテープを交換するといった日常的な監視,運用作業はデータセンターに依頼できることがほとんどです。

 また,ホームページを公開したり,電子メールのメール・ボックスを設けたりするために,サーバー機能やディスク・スペースを貸し出すサービスことを「ホスティング」といいます。ホスティング・サービスの場合には,利用者がサーバーやネットワーク機器を用意する必要はありません。このため,ハウジングに比べ,利用開始時のコストを抑えられます。「インターネットを使って商品を告知し,販売もしたい!」といったときに,手軽に利用できます。ただし,利用可能なハードウエアやソフトウエアの自由度がハウジングよりも小さくなります。

 やや駆け足で,データセンターの誕生からサービス内容,種別などを説明しました。この連載記事を通じて,データセンターがどのようなところなのか,イメージをつかめましたか? データセンターにはなじみがないと思っている方でも,当人が気付いていないだけで,実は頻繁に利用していることがほとんどです。インターネット上でよく利用されるサーバー,例えば銀行のホスト・コンピュータ,大半の物品販売サイトやオークション・サイト,携帯のゲーム・サイトのサーバーがデータセンターに置かれているからです。

こぼれ話:歴女とデータセンター

 私たちは,感情や思い,考え方などを他人に伝えたいとき,文字や言葉を使います。しかし,人類が誕生した当初から文字や言葉があったわけではなく,最初のうちは手振りや身振りで意思を伝達していました。文字や言葉を使うようになったことで,他の生物とは明らかに異なる,文明や文化の発展という歴史を築くことができたのです。

 文字や言葉の記録物として代表的なのは,紙でしょう。古来,紙を用いて情報をやり取りし,それが後世まで残ったことにより,今を生きる私たちは過去の風俗や風習などが鮮明に分かるのです。

 近ごろは,“歴女(レキジョ)”と呼ばれる,歴史好きの女性が増えているようです。太古の人々が残した情報に触れ,時の流れに大きなロマンを感じるのでしょう。ブログやSNS,ツイッターなどの情報がインターネット上のサーバーに保存され続けるとすると,未来の歴女たちはそれら情報に触れ,ロマンを感じてくれるのでしょうか。その場合,データセンターがタイムマシーン役を担うことになる,とは言いすぎでしょうか。

松本 佳浩
リコーテクノシステムズ ITマネージド本部 EMS運用センター RGシステム運用部 サーバ運用グループ リーダー

 RGシステム運用部は,リコー・グループの電話運用から,各種のサーバー運用までを幅広く担当する部門。 サーバ運用グループは,データセンターで預かっているサーバーの運用を担当。ITILの考え方を取り入れ,運用品質の向上に努めている。また,ISO20000を取得した際に大きな役割を果たし,今も継続的に改善活動を実施している。