近年,BCP(事業継続計画)への関心が高まってきています。このBCPとは,自然災害や火災,パンデミック(インフルエンザなど感染症の世界的な大流行),事故といった緊急事態が発生した場合でも,事業の継続が可能になるよう,もしくは事業の一時的な中断を余儀なくされたとしても早期に再開できるよう,あらかじめ取り決めておく対応計画のことです。

 緊急事態が発生した場合には,システムが被災したり,要員を確保できなくなったりします。このため,一般にはBCPの一部として,システム・バックアップの方法や要員確保の体制などを策定しておきます。

 これまで説明してきたように,実運用システムの稼働場所やデータの保管場所としては,頑強な地盤や堅ろうな建物に,安定した電源や強固なセキュリティなどの設備が整ったデータセンターが適しています。状態監視やデータ・バックアップ,ウイスルやDoS(Denial of Services)/DDoS(Distributed DoS)対策といった運用管理のサービスを受けることも可能です。運用管理の要員や各種設備をデータセンター全体でシェアできるので,個別に設備を用意し,各分野のスペシャリストをそろえる場合よりもコストを削減できるわけです。

離れた場所にシステムを二重化する

 最近では,緊急事態により引き起こされる大規模なシステム障害から早期に復旧できるよう,メインのシステムとは地理的に離れた場所に,バックアップのシステムを設けるケースが増えてきました。有事の際には,バックアップのシステムで処理を代替するのです。

 データセンターによっては,メインとなるデータセンターとバックアップとなる遠隔地のデータセンターに同じ構成のサーバーを用意し,データをバックアップするサービスを提供しています。こうしたサービスを利用することで,ディザスタ・リカバリ(災害復旧)が容易なシステムを多大なコストをかけることなく構築可能です。つまり,データセンターを活用すると,事業継続計画を立てやすくなるのです。

 地理的に離れた場所にバックアップのシステムを置くには,いくつかの手法があります。例えば,アプリケーションがトランザクション処理命令を複製して双方のシステムで実行させる,DBMSのレプリケーション機能やストレージ装置のコピー機能を利用してデータを複製する,などです。いずれの方法でも,コマンドやデータがネットワーク上を高速に流れることが前提になります。

 従来は,離れた場所にあるシステム間で連携処理をするには,専用線と呼ばれる高価な回線を引く必要がありました。その回線コストがネックとなり,よほど重要なシステムでない限り,システムを二重化してそれぞれ別の場所に配すことは現実的ではありませんでした。しかし,インターネットの普及によって,状況が一変しました。

 インターネットは,米国国防総省が研究や調査を目的として構築した「ARPANET」と呼ぶネットワークを原型とし,世界中に網目状に張り巡らされたTCP/IPベースのネットワークです。網目状であるがゆえに,一部の回線が切断されても,う回ルートを経由可能です。つまり,ネットワーク通信の停止が起きにくい仕組みになっているのです。1990年代半ばに管理が民間に移管され,商用ネットワークとして利用可能になってから,世界中で急速に普及しました。それに伴い,アナログ回線からディジタル回線,光ファイバー回線へと通信環境が進化しました。その結果,安定性の高い,高速な回線を安価に使えるようになったのです。

CPUで目玉焼きができる

 サーバーなどのシステム機器は,稼働中に発熱する部品を多数搭載しています。検索エンジンに「CPU」「目玉焼き」などのキーワードを入力すると,「コンピュータのCPUで目玉焼きができるか」といったWebページが多数ヒットします。

 こうした発熱によってサーバーの動作に支障が生じないよう,サーバーはファンを備えており,電源を入れると「ブゥオーン!!」とすごい勢いでそのファンが回り出します。ファンの働きでサーバー内部の熱が外に排出されると,当然のことながら,サーバーを設置した部屋の温度が上がっていきます。このため,部屋そのものの温度を下げる仕組みが必要になります。

 データセンターでは温度(湿度もそうです)が一定になるように,空調を利かせています。データセンターによって多少の差異はありますが,サーバーなどのシステム機器が快適(?)に過ごせるよう,温度を21~24℃,湿度を40~60%に保っています。

こぼれ話:1年中,木枯らしが吹き始める晩秋

 夏場など,外が35℃を超える猛暑日でも,データセンターに入るとそこは10℃以上も涼しい別天地です。ただし,実際は涼しいというより,「寒い」くらいです。温度は春もしくは秋の快適なころと同じなのですが,冷たい風が吹き荒れているからです。

 データセンターは空調で温度や湿度が一定になるよう制御しているだけでなく,熱が部屋の一部に滞留することのないよう,送風もしています。最近の施設では,サーバーの排熱を集めた「ホットアイル」と空調機による冷気を集めた「コールドアイル」を分離して,熱を独立した部屋に閉じ込めるケースもあります。

 データセンターに出向く際は,木枯らしが吹き始める晩秋のころの気候を想定して服装選びをされることを勧めます。ちなみに,私たちが利用しているデータセンター内の休憩室には,真夏でもホット・ドリンクが買える自動販売機が設置されています。

松本 佳浩
リコーテクノシステムズ ITマネージド本部 EMS運用センター RGシステム運用部 サーバ運用グループ リーダー

 RGシステム運用部は,リコー・グループの電話運用から,各種のサーバー運用までを幅広く担当する部門。 サーバ運用グループは,データセンターで預かっているサーバーの運用を担当。ITILの考え方を取り入れ,運用品質の向上に努めている。また,ISO20000を取得した際に大きな役割を果たし,今も継続的に改善活動を実施している。