2009年10月28日~30日に開催された「ITpro EXPO 2009」展示会場で,日経コミュニケーションの河井保博副編集長と松元英樹記者が「きっかけはコスト削減,進化し始めた企業ネット」と題する講演を実施した。この講演では,日経コミュニケーションが実施した「企業ネット実態調査」について結果のポイントを解説。同時に,実際のユーザーを取材した生の情報も披露することで,企業ユーザーにおけるネットワーク構築の実際を来場者に明らかにした。そこで見えてきたのは,経済状況悪化の影響で「コスト」を強く意識しながら,ネットワークの新技術や新サービスを導入していくことで企業の競争力を高めようというるユーザーの姿だ。

コスト削減意識を強める企業ユーザー

 今回の講演で取り上げた調査は,日経コミュニケーションが総務省と共同で毎年実施している恒例のもの。今年は2009年7~8月の期間に実施され,3786社に調査票を送って,1167社から回答を得た。

図1●日経コミュニケーションの河井保博副編集長
図1●日経コミュニケーションの河井保博副編集長

 この調査結果の中で,日経コミュニケーション河井副編集長(図1)が強調したのは,ユーザーの「コスト削減」に対する意識の高まりだ。2009年の調査結果では,52.2%と半分を超えるユーザーが過去1年間に「コスト削減に取り組んだ」と回答している。この動きは今後も強くなる傾向にあり,今後「取り組む予定」と答えたユーザーは57.7%とさらに増えた数字となっている。「もっともっと増えていくのではないかと感じている」(河井副編集長)。

 コスト削減の意識は新規構築に限らないという。特徴的なのは,新規投資の際に意識することを聞いた設問で,「ランニング・コストを減らしたい」という回答が1年前の調査の24.1%に比べて,今年は37.0%と大きく増えていること(図2)。この結果を「一時的な投資はやむをえないとしても,毎月のランニング・コストを減らせるならいい,と考えるユーザーが増えてきている」(河井副編集長)と分析する。

図2●企業ユーザーが新規投資の際に意識すると答えた項目
『日経コミュニケーション』企業ネット実態調査(2009年10月1日号特集)より。

テレビ会議の活用で出張費などの削減を図る

 こうした高まるコスト削減意識に対する具体的な取り組みとして,講演の中では「テレビ会議」「シン・クライアント」「サーバー仮想化/サーバー統合」「クラウド・コンピューティング」の4つを指摘。今回の講演では,その中のテレビ会議に焦点を当てて詳しく解説した。

図3●日経コミュニケーションの松元英樹記者
図3●日経コミュニケーションの松元英樹記者

 テレビ会議を使っているユーザーが順調に増えていることは調査の結果にも表れている。テレビ会議を「使っている」と答えたユーザーが,2008年は43.4%だったのに対し,2009年は47.7%と約半数に迫ってきた。講演では,テレビ会議でコスト削減を実現した具体的なユーザーとして,日経コミュニケーションの松元記者(図3)から自動車用部品メーカーの「デンソー」と,分析機器メーカーの「ジーエルサイエンス」が紹介された。

 それによると,デンソーでは,従来は社内にテレビ会議用のサーバーを設置していたが,SaaS型のテレビ会議システムである「WebEX」に2008年10月に切り替えた。きっかけとなったのはサーバー機の保守契約切れだ。新しいサーバー機を導入しようとすると,数千万円単位の費用が発生することから,SaaS型システムの導入に踏み切った。1ライセンス当たり月額数千円なので,本社のある愛知から東京までの出張を減らせば十分に元が取れる計算となる。「SaaS型を使うことで初期投資がかからずに,必要に応じて追加できるのがミソ」(河井副編集長)。また,単にコストが削減できただけでなく,社外の得意先や仕入れ先の人も一緒に会議ができるようになったという面での改善があったという。

 もう1社のジーエルサイエンスのケースでは,自社内にテレビ会議のシステムを置いて利用している。ただし,利用するネットワークを工夫することで,コストを抑えている。具体的には,ギャランティ型ではなく,ベストエフォート型のサービスである「フレッツ 光ネクスト」を導入。これにより,帯域を確保しながら,回線の費用を月額5000円に抑えた。テレビ会議に使う帯域は2M~3Mビット/秒なので,フレッツ 光ネクストでも特に支障なく利用できているという。さらに,高精細のカメラを使うようにすることで,基板上の文字なども読めるようにして,開発拠点で細かい打ち合わせができるようにした。これにより,福島から毎月4~5人が行っていた東京への出張を削減できるようになった。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら