ハードの設置スペースを確認するメジャー(下)は必需品。弁当や常備薬、マスクも携え、健康に気を遣う。
 SRAグループのシステムインテグレータ、AITで営業を担当する坪は、ハードからOS、ミドルウエアまで幅広く手掛ける。入社して4年目で社長賞を受賞した坪が、営業として意識して取り組んでいるのが「顧客との会話を楽しむ」ことだ。

 楽しむといっても、仕事と関係ない話題で盛り上がろうというのではない。相手のニーズを探り、互いの認識を擦り合わせるのが目的である。

 出身地や家族、趣味といった話題から入り、話しやすい雰囲気を作ってから商談に臨めば、「実は、こういうことなんです」と顧客から本音を引き出しやすくなるという。

 普段から坪が持ち歩く弁当が、話しやすい雰囲気作りのきっかけになり、顧客との会話が弾むことも多い。「妻が作ってくれまして…」と切り出し、子供や家族の話などへと話題を広げていく。

 顧客との会話を重視する営業担当者は少なくないが、坪の特徴は常に顧客の目線を意識している点だ。「顧客はどうしたいと望んでいるのか」「それに対する当社の対応はどうだったか」などを巧みに聞き出し、商談の反省材料にしている。「打ち解けたなかで出てくる顧客の本音こそ、最も重要な意見。こちらの対応を改善するのに大いに役立つ」と言う。

 システム開発が難しい状況に直面しているときこそ、顧客との普段のコミュニケーションが効いてくるというわけだ。

 実際、あるプロジェクトでトラブルが発生したとき、AITのエンジニアと顧客の間を坪は奔走して解決にこぎ着けた。「顧客との認識の差が解消し、最終的には手戻りなくトラブルを収束できた」と坪は話す。

 このプロジェクトでは、さらに新たな案件を獲得できた。顧客から「今回はITインフラ部分だけを担当してもらったが、次回はさらに大きな仕事を任せたい」という要望が出されたのだ。

 「会話を楽しもうと意識したことが、結果的に顧客からの高い評価に結び付いた」と話す坪は、今日も愛妻弁当を携えながら、顧客との時間を楽しもうとしている。

=文中敬称略

坪 広志(つぼ ひろし)
AIT
営業統括本部 産業営業部 主任
2001年に立教大学を卒業後、アルバイトの傍ら作曲家を目指す。テレビ番組などに楽曲を提供していたが2005年8月、結婚を機にAITに入社。現在、流通や医療、通信・メディアなどの業種向けに、ITインフラを販売する部署に所属する。昨年は社長賞を受賞した。今でも趣味として作曲を続けている。

出典:日経ソリューションビジネス2009年10月30日号 69ページ
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