「2020年に温暖化ガスを1990年比25%削減」との公約を掲げた民主党が、政権交代を果たした。今後、その実現のため、主要企業に排出上限を課す排出量取引制度の導入を目指す。産業界との調整で難航しそうだ。

 「しがらみの中で前に進まなかった政治が前に進む」。選挙結果の大勢が判明した8月30日深夜、民主党の岡田幹事長は記者会見でまずこう述べた。自由民主党は、環境政策の重要な舵取りを日本経団連など産業界の意向に配慮しつつ、経済産業省を主体に進めてきた。2020年までの温暖化ガス中期削減目標がその典型で、自民党案の「2005年比15%削減」は、家庭部門や運輸部門を大幅に削減することを前提に設定された。

 民主党が掲げる環境政策に関するマニフェスト(政権公約)(図1)の実現は、まさにこの「産業界とのしがらみがない強み」を本当に生かせるかがカギを握る。選挙結果を受け、電気事業連合会と日本鉄鋼連盟は声明を発表し、同党が掲げる温暖化ガスの中期削減目標「1990年比25%」に対し、「現実を踏まえた対応をお願いしたい」(電事連)など、くぎを刺した。

図1●「温暖化ガス25%削減」に向けた民主党のマニフェスト(主な具体策)
図1●「温暖化ガス25%削減」に向けた民主党のマニフェスト(主な具体策)

 ただ一方で、エネルギー・環境分野で豊富な先進技術を持つ三菱重工業は、「新たな技術立国に向けた明確な将来像を描き、国際社会の中でさらなるリーダーシップを発揮していただきたい」との社長コメントを公表、民主党への期待をにじませた。

 中期目標とともに産業界の反発が必至なのが、キャップ・アンド・トレード(C&T)方式の排出量取引の導入だ。企業にCO2排出量の上限(キャップ)を設けるこの制度は、とりわけCO2排出量の多い電力や鉄鋼業界などの抵抗が強い。

 自民党のある議員は「政権を取れば、C&Tに対する産業界の抵抗がいかに強いかわかるだろう」と打ち明ける。労働組合から支持を受ける民主党議員の中にはC&Tなどに批判的で、党内は具体的な環境対策では必ずしも一枚岩でない。

 こうした壁を乗り越えられるか否かは、子供手当など注目度の高いテーマが並ぶマニフェストのなかで、環境政策がどの程度の優先順位になるかに左右される。その試金石が、9月23日からの国連総会の一般討論演説に総理大臣として出席する民主党の鳩山代表が、温暖化政策で踏み込んだ発言をするかだ。国連の場で「90年比25%削減」を世界に発信すれば、それを裏打ちする国内の温暖化対策で妥協できなくなる。民主党はC&T方式の排出量取引を2011年に導入すると公表しており、早々に詳細な制度設計に取り掛かる必要がある。同党は、CO2の大量排出業種については、産業競争力を損なわない配慮が必要としている。

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