熊川 勝 氏
HSB代表
熊川 勝 氏

 個人事業主のSE/プログラマ/プロジェクトマネジャーとして活躍する熊川 勝氏のコンピュータとの出会いは小学生時代に遡る。「叔父が買ってくれたポケコン(携帯用コンピュータ)で遊んでいました。小学校から高校までは,ポケコン用プログラムの開発を通じて独学でコンピュータを学びました」(熊川氏)。

 高校卒業後,町田経理専門学校(現在は閉校)のSEコースに進学。1995年に同校を卒業後,社員10数人のソフト会社に入社した。会社の業務は,客先常駐型のソフトウエア開発がメインだったが,熊川氏は主に,会社への「持ち帰り開発案件」をリーダーとして担当。会社の「エース」として社内の出世も早かった。

 2005年12月31日に熊川氏は会社を退職。2006年1月からフリーエンジニア(個人事業主)として新たなスタートを切った。退職した一番の理由は「後輩を育ててもすぐに辞めていくことにむなしさを感じた」ため。社長からリーダーとして鍛えられたので考え方が経営寄りになり,ほかの社員と話が合わなくなったことも退職のきっかけになった。

勉強会やイベントなど人の集まるところに出向く

 熊川氏は,「首都圏コンピュータ技術者株式会社(MCEA)」に登録している。MCEAはフリーエンジニアに対して営業代行(案件の紹介)や福利厚生(各種保障や健康診断)など様々なサービスを提供している。「私の目的は福利厚生。最初から営業は自分でやると決めていたので,営業をMCEAに依存するつもりはありませんでした」(熊川氏)。

 熊川氏の営業戦略は2つある。1つは「1%戦略」。これは「名刺を持ち歩く」「屋号を付ける」など,「100回に1回くらいは有利になる」ことを積み上げていく戦略だ。もう一つは勉強会やイベントなど人の集まるところに出向くこと。できれば何かしら目立つことをして覚えてもらう。「こいつは仕事ができそう。きっかけがあったら仕事を出そう」と参加者に思ってもらうことが狙いだ。実際,熊川氏は毎週のように平日の夜や土日に勉強会やイベントに出かけている。

 案件として受けているのは自宅で作業できる「持ち帰り開発案件」のみ。客先常駐はやっていない。これは「常駐すると時間的な余裕がなくなるので,持ち帰り案件の顧客を逃してしまう」ためだ。

 収入に関しては「手取りで前の会社と同じか増えているくらいですね。ただ,労働時間は前の会社よりも圧倒的に少ないです」という。経費がかかるので手取りは年収の3分の2くらいだが「持ち帰り案件だけで年収1000万円は十分に可能です」(熊川氏)。

 現在力を入れているのが,フリーエンジニアのチーム作り。「MCEAに登録している6人で2008年6月に『BizLink』と呼ぶチームを立ち上げました。今は個人で受けた案件とチームとして受けた案件を両方こなしています。大規模な案件を受けられるようにチームの人数は増やしていきたいですね」(熊川氏)。

 熊川氏は,フリーエンジニアで最も大変なことは「自己管理」と「営業」と指摘する。最もやりがいを感じるのは「納めたものを顧客に喜んでもらえたとき」。すべての裁量が自分にあることも,やりがいにつながっている。

お仕事解説:フリーエンジニア(個人事業主)

受注金額は全額自分の収入に

 個人事業主とは,会社に属したり法人を設立したりせずに,個人で事業を営む人を指す。最近は,個人事業主として活動するITエンジニア(フリーエンジニア)が増えている。営業から契約,開発,納品,請求まで,すべて自分で行う必要があるが,顧客とは個人として契約するので,受注金額は全額自分の収入になる。最近は,首都圏コンピュータ技術者株式会社のように,個人事業主のITエンジニアに対して,営業支援や福利厚生,青色申告の支援などのサービスを提供する会社が増えている。

必要なスキル

  • 営業としてのコミュニケーションスキル
    営業して仕事を受注するためには必須。
  • 勉強熱心さ
    常に勉強して自分を伸ばさないと,フリーとしてはやっていけない。
  • 笑顔
    個人事業主は自分自身が「広告塔」。「儲かっていなさそう」な顔をしていると仕事は来ない。常に笑顔を忘れないことが大切。
出典:ITpro Magazine 2009.Spring号 p.72
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