山田 祥寛 氏
フリーライター
(WINGSプロジェクト 代表取締役)
山田 祥寛 氏

 「『技術があれば書けるよね』などという人がたまにいますが大きな間違い。大事なのは,技術をまだよく理解していない読者でも,読んで分かる文章が書けるかどうかです」。

 「基礎Perl」(インプレス刊)や「JavaScriptマスターブック」(毎日コミュニケーションズ刊),「独習Java サーバサイド編」(翔泳社刊)など,数多くの書籍や雑誌記事を手がけるフリーライターの山田 祥寛氏は,テクニカルライターの神髄をこう語る。「ベースの技術力は当たり前。その上で読者の立場に立てる想像力が不可欠です」(山田氏)。

 33歳の山田氏の「ライター歴」は長い。最初の書籍を執筆したのは1998年に入社したNECの新入社員時代。「大学時代に少し凝ったWebサイトを立ち上げたのをきっかけに出版社から執筆依頼がきました」(山田氏)。

 そこから山田氏の“二足のわらじ”生活が始まる。NECの資材部でシステム開発に携わりながら,書籍や雑誌記事の執筆をこなす。ただでさえ忙しいシステム開発に執筆稼業が加わり,当時の生活は多忙を極めたと山田氏は振り返る。それでも「長い文章を書くことは元々苦になりませんでした」という山田氏は執筆活動を続ける。「読者からの『役に立った』という声が大きなやりがい。仕事の成果が具体的な形として残っていく喜びも大きい」(山田氏)。

 こうして山田氏は,執筆活動の割合を徐々に増やしていく。2003年3月にはNECを退職し,フリーのライターとして専任するようになった。

執筆と編集/監修業の両方を追い求める

 独立と同時期に山田氏は「WINGSプロジェクト」を立ち上げる。同プロジェクトは,別に本業を持つ兼業ライターを組織化し,山田氏の下で記事執筆などを行うコミュニティのこと。2005年に有限会社化し,現在では30人弱のライターが登録している。

 このプロジェクトのきっかけは,2003年7月にインプレスから発行した「基礎PHP」という本だった。同書で山田氏は,6人のライターを使って6章を作成し,自らは編集・監修に徹する手法を取った。

 こうして,様々なライターの協力を取り付けることで,山田氏もより多くの仕事量をこなすことが可能になり,仕事の幅が広がった。とはいえ山田氏は,「あくまでも自分の中でのメインはバリバリ書くライター業です」と語る。いずれは編集者に軸足を移していく可能性は否定しないものの,やり残したことがあるという感覚が強いようだ。

 「自分としてはうまく書いたと思う本が売れなかったり,逆にこれは今一歩だったという自己評価の本が実際は売れたりすることがあります」(山田氏)。読者に“受ける”本や雑誌記事とは何なのか。山田氏のチャレンジは続く。

 そんな山田氏に後進へのアドバイスを求めると,「1つのプログラム言語や1つの技術などにはこだわらず,視野を広く持ってほしい」と答えた。山田氏自身,「高校時代に趣味で小説を書いたことがあり,今からでも機会があれば小説にも挑戦したい」と,テクニカルな書籍だけではなく,いろいろと書いていきたいとの希望を披露してくれた。

お仕事解説:テクニカルライター(書籍・雑誌ライターの場合)

難しい技術を分かりやすく解説

 テクニカルライターとは,書籍や技術専門誌に解説記事などを書くライターのこと。また,製品マニュアルを作成する人もテクニカルライターと呼ばれる。フリーで仕事を請け負う人や,編集プロダクションに属している人などがいる。本業のエンジニアの傍ら,テクニカルライターを兼ねている人も多い。

必要なスキル

  • 幅広い分野の技術力と知識
    もちろんベースとなる技術力と知識がなければ文章は書けない。しかもできるだけ幅広い分野の知識を習得する必要がある。
  • 想像力,バランス感覚
    技術についてよく分かっていない人の立場に立って,その人にも分かる文章が書けなければならない。
  • スケジュール管理能力
    いくつかの原稿を並行して請け負う場合がある。締め切りに間に合うよう,きちんとしたスケジュール管理能力は必須。
出典:ITpro Magazine 2009.Spring号 p.68
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