経営者にとって、情報システムは頭痛の種になりがちだ。業務に必須だが投資に見合った効果が出るとは限らない。ほかの設備投資に比べて専門的で難解でもある。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務め急成長を支えた著者が、ベンダーとユーザー両方の視点から、“システム屋”の思考回路と、上手な付き合い方を説く。

 この連載で書いてきた、情報システム会社やIT(情報技術)業界が抱える問題を考える土台として、「システム・インテグレーション(SI)」「システム・インテグレーター(SIer)」という言葉は避けて通れないと思います。

 米国発であるSystems Integrationという概念が日本に入ってきたのは、1980年代だったと思います。当初はその言葉の通り、製造元が多岐にわたるような複数のシステムを矛盾なく、経営上の効果が出るように統合することを指していました。例えば、売り上げ管理パッケージと経費管理パッケージ、それに文書管理の光学記録システムや、ワークフロー管理システム、さらにユーザー固有の要件を満たすカスタムメードの部分などを統合するわけです。

「統合」の本質から離れてしまったシステム会社

 ところが日本の情報システム会社は「インテグレーターにならないと受注機会を失うのではないか」という強迫観念と、「インテグレーター認定されると行政機関から優遇措置が受けられる」といった動機から、一定規模以上のほとんどすべてのシステム会社が「インテグレーターだ!」と宣言してしまいました。

 日本におけるシステム・インテグレーションあるいはシステム・インテグレーターの定義は、製造元が多岐にわたる複数システムの統合という本質から離れていき、顧客企業から契約を請け負う「元請け」という意味になってしまったのです。

 よく知られているように、システム会社は「下請け」「孫請け」の多重構造のもとで仕事を請け負っています。顧客企業が大企業であれば、元請けのメイン・ベンダーは著名なシステム会社であり、この下請けに数社が入ります。下請けといっても各社とも従業員1000人規模の企業だったりします。数社の下請けの下に、さらにそれぞれ数社ずつが入り、孫請けを構成します。下請けと孫請けの間は請負契約ですが実態は人材派遣であることが多く、さらに、孫請けの人員不足を「ひ孫請け」の企業のメンバーが、孫請け会社の名刺を持って派遣されていることもあります。

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