温暖化対策として導入が進むコージェネレーション(熱電併給)システム。そのCO2削減効果をどのように計算すれば適切か、長らく議論が続く。国内クレジット制度に限る形で、経済産業省主導の議論が動き出した。

 中小企業でCO2削減事業を進めると国内排出枠が発行される「国内クレジット制度」。この排出枠は自主行動計画の目標達成に使えるため、主に大手企業が購入している。

 経済産業省は事業内容や削減効果などの認証委員会を開催。そこでたびたび議論されたテーマがある。電力会社からの購入電力と切り替える形でコージェネや自然エネルギーなど小規模の電源を導入した時、どんな方法でCO2削減量を計算するかだ。

 小規模電源の導入によるCO2削減効果の算定には、置き換わった電力会社からの購入電力が、どんな電源で発電され、どれだけのCO2を排出したのかを把握する必要がある。

 その電源が、原子力発電や水力、火力などまでを含む「全電源」か、それとも電力需要の変動に対応するため調整に使う「限界電源」(主に火力発電)なのか――。長年、電力業界とガス業界の論争のタネだった。

 経産省は6月、国内クレジット制度での運用に限定する形で、基本方針を発表した。事業を始めた当初は限界電源、一定期間を経た後は、電力10社の全電源排出係数の平均(全電源平均)を採用するという。

 政府はこれまで、自主行動計画で報告するCO2削減量の算定に、全電源平均だけを使うように産業界に求めてきた。ところがここにきて、「売買される排出枠発行の根拠となるCO2削減量の算定に、実態に即した計算方法を採用するため」(関係者)、今回の議論が始まった。

電力・ガスのトップが合意

 CO2削減量の算定の仕方はこうだ。(1)購入電力を使った場合のCO2排出量から、(2)小規模電源を使った場合のCO2排出量を差し引く。(1)は電力消費量に、電力会社の「CO2排出係数」を掛けて算出。(2)は電力消費量に、燃料別のCO2排出係数を掛ける。CO2排出係数とは電力や燃料を1単位消費すると排出されるCO2の量。議論の争点は(1)で使う排出係数だ。

 関係者によると経産省は電力・ガス関係者と、詳細を詰めているところ。全電源平均への移行期間や、限界電源の定義などに論点が残る。

 国内クレジット制度は2008~12年に運用されるため、移行期間は5年よりも短くなる見通し。1年目は(1)に限界電源の排出係数を使い、2.5~3年目以降、全電源平均の採用が検討されている。移行期間中は、限界電源と全電源平均を併用する。

 委員会関係者によると、具体的には次のような考え方が根拠になっている。

 小規模電源の導入後、電力会社は一時的に、電力需要の減少に限界電源で対応する。ところが一定期間を経れば、電力会社は需要減を織り込んだ電力供給を計画して、全電源で対応する。従来の全電源だけを使う方法から、計算は複雑になるが実態に一歩、近づく。「電力とガスのトップも合意した」(関係者)結論だという。

 政府は8~9月にも結論を出すことになりそうだ。自主行動計画で、限界電源を使って削減効果を計算したいと強く主張する業界もある。この措置の採用範囲を広げようとの議論も巻き起こりそうだ。コージェネや自然エネルギーを使った温暖化対策を打つ企業にとっては、対策の効果がより実態に即した形で評価されるようになる。議論の動向に注意すべきだ。

出典:日経エコロジー 2009年9月号 15ページより
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