エンドユーザー・ヒアリングの三つの手法のうち,インタビューとブレーン・ストーミングについて説明してきたので,もう一つのアンケートに関しても簡単に触れておこう。アンケートの方法やテクニックに関しては,当連載の本筋でないし,それらの情報はサイトなどで多数あるので,ここでは割愛する。ここでは,業務要求やユーザー要望のヒアリングでアンケートを活用する場合の注意点について触れておく。

(1)アンケートの作成時には,必ずサイトや書籍などで設問の作り方などを学んでから実施すること。正しい設問設定でないと回答者は混乱し,回収率の低下や回答内容の信ぴょう性に影響する。

(2)回収率が低い場合は,アンケート結果を鵜のみにしないこと。なぜ回収率が低かったのか原因を確認する必要がある。

(3)アンケート結果をそのまま直接業務要求やユーザー要望にまとめるのはできれば避ける。インタビューやブレーン・ストーミングの参考資料として使い,ユーザーの声であらためて結果の妥当性を確認してからまとめに用いるとよい。

 次に,業務基本要求やユーザー要望をまとめるときのポイントをまとめてみよう。

(1)表記の仕方
 表形式でも個条書きでもどちらでもよい。もしどちらがよいかと質問されたならば,表形式を推奨する。表形式の方が大項目・中項目・小項目と階層がひと目で分かりやすいからだ。また,先にマインドマップを活用するまとめ方を紹介したが,この方法は表形式の方がやりやすい。

 最も重要なことは,1行(1文章)1要求で書くことである。二つの要求を一つの行に入れてはならない。以下に例を示す。

× 新規顧客登録を行った場合,顧客一覧の一番上に表示し,必要に応じて姓名または登録年月日でソートできるようにしてほしい。

○ 新規顧客登録を行った場合,顧客一覧の一番上に表示してほしい。
  姓名または登録年月日でソートできるようにしてほしい。

 二つの要求や要望を一つの行に入れてしまうと,ベンダ-がRFPに回答するときに「最上段表示は可能だが,ソートは別途開発が必要。この場合なんと回答したらよいか」と混乱するからだ。二つに別れていれば回答は明確にできる。図9に,ユーザー要望一覧のサンプルを示す。

図9●ユーザー要望一覧表の例
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(2)優先順位をつける
 業務要求やユーザー要望には,必須のものとあればよいものといった優先順位が必ずあるはずだ。業務要求は業務を満たすために必要な要求が多く,また現行システムでできている機能を踏襲する要求も含まれているので,優先順位の高いものがほとんどであろう。

 一方,ユーザー要望は新システム導入のキモとなる要望(業務とシステムの食い違いを埋める機能)もあれば,一部のユーザーだけが欲しがっていて,システム全体の観点から見ればあまり重要でないものもある。3段階程度の優先順位をつけて,重要度を明確にしておきたい。

(3)エンドユーザーのレビューを実施する
 上記の優先順位付けは,インタビューやブレーン・ストーミングに参加してもらったエンドユーザー(全員参加が難しい場合は,代表者でもよい)に参加してもらう方がよい。せっかくここまで「当事者」として参加してもらったのに,最後になって「勝手に自分の要望の優先順位を下げられた。自分は聞いていない」となってしまうことは避けよう。

 優先順位付けと同時に全体のレビューをエンドユーザーにしてもらい,漏れや解釈ミスがないことを確認して,完成度を向上させる。

 この段階で,何らかの理由で業務要求やユーザー要望に記載しないことを決定した要求などがあれば,なぜ却下したのかエンドユーザーにきちんと説明しておこう。多少文句を言われても早めに説明すべきであり,これを怠って後々のフェーズに持ち越すと大事件になってしまうこともあるからだ。

 業務要求とユーザ-要望の洗い出しにおいて,どのような手法が中心となるのかを,図10にまとめておく。

図10●業務要求(業務基本要求とユーザー要望)の洗い出しのまとめ
図10●業務要求(業務基本要求とユーザー要望)の洗い出しのまとめ

永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。