ソフト開発会社が、大きな転換期を迎えている。いわゆる“リーマンショック”に端を発した景気低迷によって、需要の落ち込みとITコスト削減の嵐が吹き、売り上げが急速に落ち込んでいるからだ。

 不景気で顧客からの値下げ要求は厳しさを増している。「この価格でできなければ、他社に切り替える」「この予算しかない。できなければ他社に頼む」などと言われる例は後を絶たない。プロジェクトに参加する技術者の名簿を提出させ、一人ひとりと面接し、「この人には月50万円を支払えない」と言われたケースもある。

 顧客が値下げを要求するのは、ハードの価格は下がったのに、ソフト開発費はあまり下がっていないと感じているからだ。ソフト開発でも製造業のようなプロジェクト管理体制を築かないと、顧客の要望には対応できない。

 2009年度の第1四半期の決算発表を見ると、今期の売上高が10%前後の減収になるソフト開発会社が多そうだ。今までのビジネスモデルや開発手法を思い切って見直さなければ、通期で赤字に転落するソフト開発会社が増えるのは間違いない。そこで筆者は、ビジネスモデルの三つの変革を提案したい。

 まずは、今の会社を二つに分割することだ。ユーザー企業の要望を聞いて実行する今までのような事業形態のソフト開発会社と、新しいビジネスを展開するソフト開発会社に分けるのだ。

 例えば社員数が1000人の場合、900人が今までの事業形態を引き続ぎ、100人を新会社に移管する。新会社で自前のサービスなど新規事業、新市場開拓に取り組む。新会社へ移管する社員数は、売上高の削減に応じた分を充てるという考えもある。

 ソフト開発会社は、メインフレームを売るために必要なシステム構築の一部を請け負う存在として登場した。いわば、ずっと下請けだった。

 そんな業界が急に方向転換することは難しい。受注できそうな案件があれば、すぐ獲得に走ってしまう。社内の管理体制やユーザー企業との関係を見直したり、新しいビジネスを打ち出したりするには、時間がかかる。しかし経営環境は待ってくれない。ソフト開発会社は早急に対応に迫られている。そこで企業を二つに分割するのだ。

 次は、既存のメーカーやユーザー企業の下請けから、少しずつでも脱却していくことだ。言われたことを実行するだけではなく、独自の技術を磨いたり商品開発を推進したりするなどして、メーカーやユーザーに依存せずに済む体制を構築すべきである。

 昨年までは、下請けとして十分に売り上げを確保できたかもしれない。「自分たちだけで独自商品を開発してまで、リスクを追う必要はない」と考る経営者も少なくなかっただろう。

 しかし今は違う。下請けのままでは、どうしてもコスト削減を要求されることになる。これを避けるためには、自社商品を開発するといったチャレンジ精神が必要なのである。

 最後は、原価管理や品質管理、プロジェクト管理に本気で取り組むことである。コスト削減要求に対応できる力を付けるのだ。

 「既に販売管理費の削減や赤字撲滅に力を注いでいる」と言うソフト開発会社の経営者は多い。だが筆者の見るところでは、ソフトの開発方法はプロジェクトごとにバラバラであり、業務の効率化や標準化を実現できていないように思える。メーカーやユーザーの都合に応じていた、という理由もあるだろう。

 だが、これからはプロジェクト管理などの徹底のほか、開発環境の整備も求められる。開発方法論や開発フレームワーク、開発ツールを用意するほか、開発したソフトを標準化した部品ととらえ、効率よく作業できるようにする。1社だけでなく、複数の企業が共同で取り組んでもいいだろう。

 今こそ、ソフト開発会社の経営者は信念を持って行動しなければならない。不況を次の50年への布石を打つチャンスととらえ、実行に移すときである。

出典:日経ソリューションビジネス2009年8月15日号 70ページ
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