「時間軸」「親密軸」「空間軸」で情報を切る

 筆者は,このソーシャルメディアとリアルとの組み合わせが,これからのネット世界に大きな変化をもたらすのではないかと思っている。それは筆者のソーシャルメディア観にも深く関わっているので,先にそれを説明させてほしい。

 我々は日々,情報の洪水に溺れて暮らしている。電子メールの受信箱には必要な情報も不要な情報も溜まり,インターネットのニュースサイト、有名人や友人のブログを見るたびに新着の情報が表示される。Webサイトを「おもしろい」と思ってブックマークするたびに,読み切れない情報が増えて行く。そんな情報洪水の中,むしろ重要になりつつあるのは,多すぎる情報の中からrelevancyの高い情報(重要な情報,自分に関連のある情報)を浮き立たせる手段ではないかと思う。そして,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などに代表されるソーシャルメディアは,まさにそのためのメディアではないかと筆者は考えている。

 自分との関連性を評価する軸はいくつもある。例えば自分が関心あるテーマやそれを表すキーワードも,その1つだろう。インターネットの普及以来,常に注目を集めてきた「キーワード検索」は,まさに自分が興味を持つキーワードを基に情報を集める手段だった。だが問題は,インターネット上で情報の爆発が起こり,キーワードだけを軸にすると,情報が多すぎるようになったことだ。

 そこで筆者は,これから3つの軸が重要になってくると考えている。まず1つめは「時間軸」だ。大半の人は,昨日起こった事件より,今,まさに進行中の事件の方に関心が高い。2つめは「親密軸」だ。多くの人は,どこの誰か知らない人に起こった事件よりも,自分の知り合いが関わっている事件の方に関心が高い。誰かが書いたお薦めレストランの情報よりも,友達に「ここがおいしいよ」と言われたレストランに興味を持つ。そして3つめは「空間軸」だ。どこか遠くで起こった事件よりも,自分が住んでいる街や職場の近くで起こった事件の方に関心を持つ(図1)。

図1●情報を切る3つの軸
自分にとって大事な情報をふるい分けるために,時間軸,空間軸,親密軸のいずれかを使える。
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 これまでのパソコン上のソーシャルメディアでも,日記などの投稿情報を時間軸で並べたり,友人登録した人の情報だけを表示したりして,時間軸や親密軸の要件を満たしているように見えた。しかし,それらと関わりが持てるのはパソコンの前に座っている間だけだった。つまり,仕事場にこもっている時か,鞄からノートパソコンを取り出してデータ通信をしている間だけなのである。

 これがiPhoneのようなスマートフォンを使うと,パッとポケットから取り出したその瞬間の最新情報を取り出せる。ソーシャルメディアの時間軸が,より現実の生活(リアル)と密接に結び付くようになり始めたのだ。

 同様に親密軸でも変化が起こりつつある。これまでのパソコンで使うソーシャルメディアでは,インターネット経由で知り合い,実際に会ったこともないまま友達登録だけする使い方が増えていた。すると,ソーシャルメディアがもたらす親密性の価値が薄まってしまう。これに対して,持ち歩けるiPhoneを使ったソーシャルメディアでは,実際に人が集まるパーティなどで,「名刺は失くしてしまうかもしれないから,今この場でSNSの友達登録をさせてほしい」という形が増えてきた。友達登録の依頼で「△△のパーティで××の話で盛り上がった◯◯です」などと,一言書いておけば,名刺をもらうよりも確実につながることができる。

 本来SNSは,現実社会の人間関係をネット上で再現しようと誕生したはずだ。しかし,実社会との結び付きが弱まってきてしまった。こんな状況下で,ポケットの中からいつでもWeb 2.0のサービスを取り出せるiPhoneの登場により,ソーシャルメディアが実社会の中に再び入り込み始めたのだ。

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