6月1日,韓国の固定通信トップのKTと子会社(KTの持ち株比率54.25%)で携帯電話第2位のKTFが合併した。「競争制限によるマイナス効果」よりも「固定と携帯の統合により期待されるシナジー効果」を重視した結果と言われる。合併後のKTには何が求められているのか。合併承認過程を振り返りながら見ていく。

(日経コミュニケーション編集部)

亀井 悦子/情報通信総合研究所 研究員

 韓国では2000年以降,固定通信・携帯電話それぞれの領域の主要通信事業者間の買収・合併が行われている。代表的な例では,固定通信ではLGデイコムによるパワーコム買収やハナロテレコムによるトゥルネット合併があり,携帯電話ではKTFによるハンソルPCS合併,SKテレコムによる新世紀通信合併などが挙げられる(図1)。

図1●韓国の通信事業者の主な統合状況
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 固定事業者と携帯事業者の統合は,2008年2月にSKテレコムが旧ハナロテレコム(現SKブロードバンド)を買収しており,KTとKTFの合併はこれに続く大型案件となる(写真1,写真2,写真3)。

写真1●新生KT発足記念の記者会見で発言するイ・ソクチェ会長
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写真2●「All New KT発足式」の様子
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写真3●合併前日に看板から「F」を撤去するKTF
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競争事業者は合併反対の大合唱

 通信事業者の買収・合併の承認可否の決定は,認可申請書の提出から60日以内に行われる。その最初のステップが公正取引委員会(公取委)による審査である。その後,公取委の決定が放送通信委員会(放通委)に送られ,放通委で最終的な判断が下される。

 認可申請書の提出前後から,SKテレコムやLGデイコムなどの通信事業者とCATV事業者などがKTとKTFの合併に反対を唱えた。特にSKテレコムは合併反対陣営の急先鋒で,「KTの加入者網分離」を強く求めた。他の事業者も,「電柱や管路などKTが保有する必須設備の提供制度に改善が必要」などの反対意見を述べた。それに対してKTは,「必須設備の提供制度と合併は別問題」などと反論した。

 公取委と放通委の審査のポイントは,KTとKTFの合併が競争制限的か,KTの固定通信市場における市場支配力が他の市場に行使される可能性があるかという点である。2008年2月にSKテレコムがハナロテレコムを買収した際には,情報通信部(現放通委)の最終決定には含まれなかったものの,公取委は「SKテレコムが独占的に利用している800MHz周波数帯域を回収し,後発事業者との共同利用を義務付ける」など10件以上の認可条件を付けた。このため,今回のKTとKTF合併の認可条件にも注目が集まった。

放通委は3条件付きで合併を承認

 ところが2月25日,公取委は合併を無条件で承認した。KTの必須設備の提供制度については,「今後の通信網高度化の過程で競争環境が阻害される可能性があり,改善が必要」と放通委へ報告したのみだ。ハナロテレコム買収時にSKテレコムに付けた条件とは大きな開きがあり,競争事業者からは不満の声が上がった。それに対して公取委は,「今回は親子会社間の合併で簡易審査の対象。ハナロテレコム買収とは事情が異なる」と説明した。

 公取委の決定から3週間後の3月18日,放通委は条件付きでKTとKTFの合併を承認した。その条件は三つ。(1)電柱・管路などKTが保有する必須設備の提供制度改善,(2)固定電話・VoIPの番号ポータビリティの手続き改善,(3)KTFのインターネット・サービスの利用体系の改善──だった。

 この決定について,競争事業者は「加入者網の分離が条件付けられなかったことは遺憾」としながらも,「必須設備提供の制度改善が担保され,KTの支配力行使の懸念が軽減される」,「競争事業者の自社網構築時の負担を圧縮できる」など一定の評価を下し,これまで事業者が個別に要求した条件がまとめられた格好で落ち着いた。

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