島根県内の地域医療と遠隔医療を支援する「医療ネットしまね」。地元企業のテクノプロジェクトがシステム開発と保守を担当している。島根県内の病院や診療所の間で電子カルテ情報を連携させ患者紹介や情報共有のためのシステムを2002 年に稼働したのを皮切りに、感染症検知や周産期医療支援など徐々にサービス領域を拡大。現在は計7システムが稼働している。医療ネットしまねは、地域に密着した医療支援でITを有効活用し継続的に貢献してきた点が評価されて、準グランプリを受賞した。

 「医師不足が深刻な地域の医療を支援するシステムになっている」。島根県立中央病院の清水史郎 医療情報化管理者兼情報システム管理室室長は、同県内の医療機関が利用する「医療ネットしまね」をこう評価する。

 医療ネットしまねは、地元のソフト開発会社であるテクノプロジェクトが富士通とアキュートシステムと協力してシステムを開発。島根県内の病院や診療所の間で電子カルテシステムをベースに情報共有を展開し、迅速な患者紹介や診療予約を行う「紹介状・カルテ情報連携診療予約システム」が2002年10月に稼働した。以後、感染症の流行をいち早く検知する感染症サーベイランスシステムやWebブラウザ上で入力した健診結果をサーバーで一元管理するネット健診システムが次々に稼働。最近では2009年5月から住民参加型遠隔医療システムによるサービスを限定的に開始し、現在7つのシステムが稼働する()。利用する医療機関の数は200を超える。

表●医療ネットしまねを構成するシステム
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 多数の医療機関が利用することを想定し、システム運営管理のために「医療ネットしまね管理委員会」を設置。委員会のメンバーにはテクノプロジェクトのほかに行政、医療機関、医師会などが名を連ね、システム運用管理規定や新規サービス承認について合議で決める。テクノプロジェクトは委員会の依頼を受け、システム開発や保守に当たる。

電子カルテを連携させて情報共有

 紹介状・カルテ情報連携診療予約システムは、診療所が患者を病院に紹介する際の連絡や診療予約をスムーズに行うためのものだ。診療所が患者を病院に紹介する際、これまでは電話で診療の予約をしていたが、予約の確認が取れるまでに時間がかかる。また紹介先の病院の医師は、紹介状を受け取るまで詳しい状況を知ることができなかった。

 そこで医療ネットしまねでは、県立中央病院に設置した富士通製サーバー「PRIMERGYH200」に診療予約システムと紹介状システムを構築。県内の病院や診療所がWebブラウザからシステムを利用できる環境を整えた(写真1)。診療所は診療予約システムで紹介先の病院の診療科と担当医師の予定を確認。空き時間に診療を予約し、紹介状を送信する。紹介先の病院は、予約を受け付けると同時に紹介状の内容を確認する。

写真1●紹介状・カルテ情報連携診療予約システムの画面
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 電子カルテシステムを導入している医療機関同士であれば、電子カルテの情報を共有することも可能だ。電子カルテを医療ネットしまねのデータベースサーバーに保管しておき、診療所と病院のそれぞれがサーバーにアクセスして閲覧する。紹介先の病院は、電子カルテを参照することで詳しい病状を把握し、診療日に備えて事前の準備をすることが可能になる。紹介した診療所も、患者が入院した際にわざわざ病院に行って診療記録を見なくても、電子カルテの情報にアクセスすれば状況を知ることができる。

 紹介状・カルテ情報連携診療予約システムは219の医療機関が利用。年間利用件数は患者紹介が5000件、診療予約が1400件、カルテの開示が300件以上である。

 ただし、電子カルテシステムはすべての医療機関で導入が進んでいるわけではない。離島やへき地の診療所では、施設内に電子カルテシステム用のサーバーを設置して運用することが難しいからだ。そこで、医療ネットしまねで2006年から提供を開始したのがASP型電子カルテシステムである。

 テクノプロジェクト子会社が運営するデータセンターに電子カルテシステムのサーバーを設置してサービスを提供。これを隠岐島の病院など15の施設が利用している。

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