とかく学生に人気がないと言われるIT業界だが,本当だろうか?これを確かめるべく,採用面接などが本格化する2009年春,大学生2人と大学院生2人を招いて座談会を実施した。Part1では,学生から見たIT業界のイメージについて語ってもらった。(座談会は2009年3月12日に開催)

景気の悪化で企業の採用動向にも影響が出ています。現時点(2009年3月中旬)での就職活動の状況はいかがでしょうか。まず文系学部3年生の水沼さん,内田さんから。

水沼さん 文系 学部3年生
水沼さん 文系 学部3年生
デジタルコンテンツなどの著作権を研究するゼミに所属。出版社や広告代理店を中心に就職活動をしている。

水沼:今,1次~2次選考の段階です。選考過程そのものは例年通りですが,今まで社員を募集していたある会社から,突然「今年は採用をやめました」と連絡が来たことがありました。私の友人も同じような経験をしています。

内田:人事の仕事をしている方々に話をうかがったことがあるのですが,「今年は大卒採用者数を4分の3にする」とか,「半分にする」とかおっしゃっていました。かなり厳しいだろうと思っています。でも,同じ世代の人はみんなそうなのですから,「もうやるしかない」という感じです。

理工系修士1年生の家田さんはどうですか?

家田:2年前,自分が学部3年生のときは就職活動をしなかったのですが,そのときの周囲の様子と比べて,今年の方が大変だと思っています。ただ,選考で落ちたのを,不況のせいにしている人たちもいるような気がします。実態以上に「不況で大変」という雰囲気ができているのかもしれません。

奥野さんは理系の大学院を卒業して,今春ネット系IT企業に就職するわけですが,昨年と今年で就職活動の状況を比べると,どうでしょうか。

奥野:業界によって違うみたいです。技術系だと,海外の売り上げ比率が高いメーカーは,国内の採用者数を昨年より相当減らしているようです。文系では金融機関の人気が落ちて,今年は商社に人気が集まっているという話を聞きました。

明日会社がつぶれても大丈夫なように

社会人になったら,どんな仕事をしたいですか。また,どんな会社に魅力を感じますか。

家田さん 理工系 修士課程1年生
家田さん 理工系 修士課程1年生
コンピュータによる画像認識の研究室で学んでいる。IT業界に的を絞って就職活動をしている。

水沼:私は人をびっくりさせられる仕事がしたい。私にとって,周囲の人に「お前,ここまでやったのか」と言われるようなときが一番うれしいからです。

 魅力を感じるのは,裁量の広い会社,懐の広い会社でしょうか。「ちょっとこれをやってみたい」と言ったときに,「それは無理だよ」と否定されるのではなく,「それができる方法を考えていこうよ」と盛り上げてくれるような会社がいいと思います。

内田:私は“難しいこと”に取り組んでみたい,という思いがあります。それを乗り越えたことが喜びに変わるタイプなので。責任を与えられて,主体的に仕事ができるような会社に魅力を感じます。いろいろな選択肢があり,いろいろ働けるフィールドがある会社もいいな,と思っています。

家田:最近,大企業でもつぶれたりしていますよね。だから,サバイバル力を身につけて,明日いきなり会社がつぶれても,どうにかやっていける人間になりたいと思っています。

 その点,IT業界にはいろいろな顧客のビジネスに触れる機会があって,それが自分の力を付けることにつながるのではないかと考えています。

奥野:私は,自分がやってきたソフトウエアの技術を生かせる仕事をしたい。それと,企業向けのモノづくりではなく,自分が作ったものを一般の人たちに広く使ってもらえる仕事がしたいです。昨年の就職活動では,やはり技術力のある会社,特に技術者が自ら学んで成長している会社が魅力的に映りました。

説明会や先輩の話からIT業界の仕事を知る

IT業界は,新3K(きつい,厳しい,帰れない)など,どちらかというとネガティブなイメージで見られることがありますが,皆さんはどんなイメージを持っているのでしょうか。率直な気持ちを聞かせてください。

奥野さん 理工系 修士課程2年生
奥野さん 理工系 修士課程2年生
ネット系IT企業に今春就職。ソフトウエア開発経験あり。昨年の就職活動での体験をもとに語ってもらった。

家田:就職活動を始める前は,IT業界の仕事ってエンジニア系ばかりで,みんなずっとパソコンに向かい合って仕事をしているイメージが強かった。実際,自分は研究室でそんな感じですから。

 ただ,就職活動をしてみて,お客さんとひざを突き合わせて進めるような仕事や,チームを動かしていく仕事も多いのだと知りました。あるシステム開発の現場で働く方々と話したときは,人当たりのよさや人間性を感じました。そうでないと,きっとお客さんと一緒にシステムを作っていけないし,チームを動かしていけないのだろうと解釈しています。

内田:私は就職活動を始めるまでIT業界に詳しくなくて,IT企業の名前も出てこないくらいでした。たぶんITはすごく身近にあるのでしょうが,普段の生活の中では分かりづらいですよね。「ITは理系」というイメージもありました。

文系の内田さんにとってIT業界は,自分とは縁遠い存在だったと。

内田さん 文系 学部3年生
内田さん 文系 学部3年生
認知科学と情報産業政策を学んでいる。IT企業も含め,商品や経営方針に共感できる会社を探している。

内田:そうですね。身近なイメージがありませんでした。でも,IT業界の説明会に行ってみると「あ,違ったんだな」というのが分かりました。

水沼:私はシステム開発のことは全く分からないので,初めに少し考えていたネット系IT企業の話をします。説明会に行ったときは,すごく活気がある会社だなと感じました。

 ただ,その活気が本当の活気なのか,学生だけに見せている活気なのか,少し疑問に思うこともありました。会社説明に出てくる社員と,社内で見かけたほかの社員の雰囲気が,あまりにも違っていたからです。「どっちが本当の姿なのかな?」と同じ会社の説明会に行った友人に聞いてみると,「私もそう思った」と言います。不安を感じて,その会社は選択肢から外しました。

奥野:私は,昨年,就職活動をしていたころ,やっぱり企業向けのビジネスをしている会社が多いということと,海外に出ている会社があまりないということを感じました。あとはだいたい皆さんが話す通りのイメージです。

奥野さん,ちなみに就職活動を始めたばかりのとき,「IT業界」といったらどんな会社を思い浮かべましたか。

奥野:グーグルやマイクロソフトのような有名な会社。あと,先輩が行っている野村総合研究所(NRI)やNTTデータは,名前だけは知っていました。私が所属する情報系の研究室では,先輩がそういうところに就職していたり,説明会が大学であったりするので。

 ただ,名前は知っていても実態はよく分かっていません。先輩から話を聞いたり,ちょっとネットで調べたりする限りでは,システム開発の会社は大変そうだという雰囲気が伝わってきます。

出典:ITpro Magazine スキルアップ応援号 pp.74-81
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。