モバイルアプリケーションを積極的に採用した企業では既に、ワークスタイルが大きく変わり始めている。それに伴って、企業活動を支える情報システムにおいても、これまでのVAN(付加価値通信網)や専用線、ノートPCなどを組み合わせたソリューションとは異なる視点が求められる。

 モバイルシステムの導入を成功に導くには、「anytime(いつでも)」「anywhere(どこでも)」「anyone(だれでも)」など、モバイル端末の特徴を最大限活用するだけではなく、「Fast(リアルタイム性)」「Frequent(多発性)」「Flexible(柔軟性)」を備えた業務プロセスを構築できるかどうかが重要だ。

 そこでは、新たなワークスタイルを確立するためのストーリーが大切になる。経営の意志決定事項をリアルタイムに現場に伝える一方で、現場で多発している煩雑な業務を構造的に変革し、従業員のモチベーションや生産性の向上、ひいては顧客に与えられる価値の向上を目指す。

教育に携帯使うサントリー

 サントリーは、モバイル活用によってワークスタイルの改革を進める企業の1社だ。ファストフード店「ファーストキッチン」やサンドイッチチェーン「サブウェイ」など、グループ企業の8社900店舗で働くアルバイトやフリーター1万8000人を対象に、携帯電話を使った環境教育を実施するという。

 狙いは、グループ全体での環境管理認証の取得である。本社社員に対してはPCベースのe-ラーニング環境が利用できるが、アルバイト店員などにPCを使わせるのは難しい。そもそもファストフードなどの店頭では、PCを業務に使っていない。

 そこで目を付けたのが、彼らが持っている携帯電話である。これを受講環境に組み込むことにした。地球温暖化の影響や、環境関連法規に基づくゴミの減量化などを全17問30分ほどのクイズ形式で学ばせる。

 アルバイト店員の受講状況は、サントリー本社のほか、各店舗の店長もモニタリングできる。この仕組みにより、約1カ月半という短期間で全員受講を達成するという目標を掲げている。

働き方の自由度が高まる

 サントリーの例にあるように、利用者のITリテラシと操作環境に配慮しながら、短期間で導入効果を得られる仕組みを導入しようとすれば、携帯電話などのモバイル端末は、企業のプラットフォームとして今後、ますます無視できない存在になっていくだろう。モバイルシステムを効果的に組織に取り入れることに成功できれば、以下のようなワークスタイルの変革が期待できる。

ナレッジによるチームプレーの強化

 モバイルシステムにおいて、業務アプリケーションの操作環境は、個々のモバイル端末上に構築される。一方で、アクセスすべきデータや情報は集中化される。その結果、これまで個々人による管理に委ねられてきたデータやナレッジがセンター側で共有できる。

 今後は、何が個人の付加価値を生むナレッジで、どこからが企業として標準的に備えるべきナレッジかの区分を明確にしていくことで、「自らの顧客が奪われる」という現場の抵抗も次第に払拭されるだろう。

 PCと比べ、ちょっとした営業上の工夫点などを、どこからでも登録・参照できるのがモバイルの特徴だ。それだけに、いったん使い始めると、ナレッジの共有効果は実感されていく。組織長が率先してモバイルによるナレッジ活用事例を確立すれば、事例の再登録により所属チーム全体のナレッジの厚みを強化できる。

働く場所を選ばないオフィス

 高速な固定通信網が発達したことで、在宅勤務が奨励されてきた。加えて、モバイルシステムの普及により、社員の働く場所が自宅である必要性すら消し去る「モバイルオフィス」さえ実現可能になってきた。直行直帰のワークスタイルを実現するだけでなく、使い慣れた携帯電話から報告ができることなどから、個々人のモチベーション向上が期待できる。

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