「改善ではなく改革を」「個別最適から全体最適へ」「先進技術でシステムの全面刷新」─。世間がイノベーションを語る時、どうしてもインパクトが強い表現が好まれる。しかし、実際にイノベーションを推進させるコツは、「コンセプトは鮮明に、実行は柔軟かつ現実的に」である。

 筆者もこれまではイノベーションは大胆かつ全面的にと考えてきた。セブン-イレブン・ジャパンの情報システムの強みも、30年間に6回のシステム再構築を通じて、システムインフラからアプリケーションにわたる全体システムを、かなりの範囲でその都度刷新できた点にあった。

 一方で、ビジネスの複雑さや外部との連携要件が深まり、システムのカバー領域の広がりやシステムの肥大化が進むなかで、大多数の企業はコストや推進体制面の制約から、全面同時刷新型のシステム再構築を実行できないのが実情である。従ってここで求められるのは、業務改革やシステム革新のコンセプトを明確にしたうえで、ステップを踏んだ「現実的な実行プラン」に落とし込んでイノベーションを推進できる能力である。

 実行を柔軟かつ現実的に推進するためには、2つのポイントがある。1つは実行計画の「シナリオ」を作ることだ。テーマごとの優先順位づけと実行フェーズを整理し、各フェーズごとの達成目標と投資効果を明確にする。数年で、業務とシステム、IT(情報技術)基盤がどう改善されていくのかというシナリオを関係者全員で共有し、総論を各論に落としてスケジュールを組み立て、各部門のオーナーシップ形成と利害調整を進める。

 もう1つの重要なポイントは「選択と集約」である。どの業務領域を選択し、どういう技術やシステムを選定するか。プロセスとシステムの集約度をどこまで高めるのかを検討する。既存の業務とシステム領域との整合性や連携効果を整理し、イノベーションの領域とテーマを選択する。新プロセスとして必要機能をどこまで集約して効果を出すかをデザインする。出来上がったプランは現行システムと新システムの合作であり、現・新の融合による最適化の追求となる。短期間での全面再構築に比べて逆に難易度は高く、全体のデザイン力も求められるが、今は技術や手法も整っており、いかに柔軟に進めるかが競争に打ち勝つ鍵になる。

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