図●下方修正の理由に記載されたキーワード
昨年末から今年にかけて2008 年度通期業績予想を下方修正したソリューションプロバイダ15社の決算書を基に本誌が作成した
[画像のクリックで拡大表示]

 大手のソリューションプロバイダが、2008年度通期の見通しを相次いで下方修正している。上位60社のうち上場企業は35社。決算月が3月以外の企業を含めると、昨年11月から今年2月までに通期業績予想を17社が下方修正している。

 各社の第3四半期の財務報告書からは、ユーザー企業のIT投資抑制が一段と強まっていることがうかがえる()。住商情報システムは「IT投資が徹底的に抑制され、一部のIT投資においては投資支出の延期、凍結等もあり、売上高については期初予想より減少」と修正理由を記述。日立ソフトウェアエンジニアリングは「『システム開発事業』及び『プロダクト&パッケージ事業』の落ち込みが予想以上に大きい」と説明した。

大手も軒並み下方修正

 売上高3000億円規模のダイワボウ情報システムや野村総合研究所、日本ユニシスといった大手にまで景気悪化の影響は及んでいる()。財務報告書には、「IT投資の抑制が顕著となり需要が減少」(ダイワボウ情報システム)、「証券業を中心に需要の落ち込みは予想以上に大きく(後略)」(野村総合研究所)などの表現が相次いだ。

表●昨年末から今年にかけて2008年度の通期業績予想を下方修正した主なソリューションプロバイダ
2008年7月30日号特集「2007年度ソリューションプロバイダ業績ランキング」上位60社から抽出した
[画像のクリックで拡大表示]

 売上高の減額幅が大きいのはダイワボウ情報システムである。売上高を前回予想の4070億円から3850億円へ、営業利益は51億円から37億円へ引き下げた。

 営業利益の減少幅が大きいのはCSKホールディングスだ。同社は売上高予想を2170億円から2050億円へ、営業損益を150億円の赤字から1020億円の赤字に修正した。不動産証券化事業で、保有する不動産の棚卸資産評価損が652億円に達したことが響いた。

 日本ユニシスは売上高を3450億円3350億円へ、営業利益を220億円から200億円へ減額している。利益の予想を変えていないものの、野村総合研究所も売上高予想を3500億円から3400億円へ100億円下げた。

 このほか、準大手に位置する日立システムアンドサービスは、売上高を1350億円から1250億円へ、営業利益を94億円から72億円へと減らした。

 トランス・コスモスも売上高を1807億円から1611億円へ、営業利益を27億円の黒字から28億円の赤字へと修正した。情報サービス事業で当初計画の達成が困難になったことと、所有株式の評価減がその理由だ。

IT投資の抑制傾向が顕著に

 各社が下方修正の理由に使用したキーワードを挙げると、最も多かったのは「金融危機」や「金融市場の混乱」など、最近の金融市場に関するもの。17社中12社が下方修正の理由のなかに記載した。

 次に多かったのが「IT投資の抑制」や「IT支出の先送り」といった、ユーザー企業の投資マインドについてだった。17社中11社が言及している。

 実体経済への影響を示す「景気後退」や「景況感の悪化」については8社が記述。自社の「事業の落ち込み」は7社が、減益要因になる「有価証券の評価損」について述べる企業が6社あった。

 有価証券の評価損については日立情報システムズやシーイーシーが記述。両社は売上高、営業利益、経常利益は据え置いたものの、有価証券の評価損で当期純利益だけを下方修正した。

 大和総研で情報通信分野を担当する上野真シニアアナリストは、「ユーザー企業のIT投資抑制といった外部環境を下方修正の原因にするのは経営者の努力不足。売上高が減少しても、コスト削減を徹底して利益を確保することは可能」と指摘する。

 ドイツ証券で情報サービス産業を担当する菊池悟シニアアナリストは「他業界に比べれば需要の落ち込みはまだ健全な範囲」と説明する。同氏によれば、2000年代前半に起きたITバブルの崩壊のときですら需要の落ち込みは3%程度だった。今回はそれより悪いが、減少幅は10%程度にとどまるとみる。「仮に90%の需要が残るのであれば、工場の操業停止に追い込まれている製造業などよりも恵まれている」(菊池シニアアナリスト)。

 上野氏も菊池氏も本当に厳しいのは2009年度だと見ている。「基幹系に食い込んでいるソリューションプロバイダならよいが、周辺系のシステムを手掛ける手がけている企業はさらに需要が落ち込むだろう」(菊池シニアアナリスト)。「IT業界はユーザー企業に遅れて景気回復するので早くとも2010年秋以降になるのでは」と大和総研の上野シニアアナリストも話す。

出典:日経ソリューションビジネス 2009年02月28日号 8ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。