コンピュータメーカーや大手SIerなどによる、再々委託禁止の動きはごく当たり前のものになってきた。

 既に富士通や伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、CSKシステムズ、新日鉄ソリューションズ(NSSOL)などの大手から中堅SIerまでが、3次の下請けを禁じる「再々委託禁止」の規則を導入(表1)。今回の取材で回答を得られなかったが、取引関係のある複数の企業によると、日立製作所も同様の方針である。

表1●ITベンダーの外注体制の改革例
[画像のクリックで拡大表示]

 NTTデータと野村総合研究所(NRI)、NECは、現在のところ多重下請けを一律には制限していない。ただし、協力会社が外注を活用する場合は必ず報告と許諾を求めるなどして、下請けの管理を強化している。

 再々委託禁止より厳しい外注制限を課すケースも出ている。キーウエアソリューションズやシーエーシー(CAC)は2次への業務委託も禁じるようにしたのだ。また、ある中小SIerは「最近、日本IBMの2次下請けとして受注する予定だったあるプロジェクトの仕事がキャンセルになった。IBMが1次下請け会社に対して、再委託を禁止したことが原因だ」と話す。

1次の協力会社を選抜

 多重下請けの禁止だけではない。偽装請負を防止し、ソフトの品質管理を強化するために、協力会社を選抜し、仕事を集中させようとするSIerが増えているのだ。

 NSSOLは協力会社の絞り込みを進めている1社である。一時期は700~800社もの協力会社があったが、現在も取引が続いている企業は半分近くに減った。

 協力会社を絞り込むのは「偽装請負を防止する最善解は、下請けへの発注規模を大きくすること」(NSSOLの森中部長)と考えるからだ。従来、業務の発注単位が小さいと、下請けから2~3人の技術者が開発に参加し、納期や品質を管理できるレベルの責任者がいないこともあった。

 この場合、元請けのPMが技術者に直接に指示を与えざる場面が増え、“偽装請負”として指導を受ける恐れが高まる。NSSOLの森中部長は、協力会社には「最低でも5人の開発チームを投入でき、チームの責任者には労務管理から納期、品質の管理までの責任を負える『サブPM』と呼ぶべき能力が必要だ」と話す。

 CSKシステムズは2006年に3次下請けを禁じた結果、直接取引の協力会社をいったんは増やした。だが今後は協力会社を絞り込みたい考えだ。

 だが、単に外注を制限し、協力会社を選抜すると、大規模案件での急激な人材需要に応えられないというジレンマに陥る。そこで、中小SIerとの直接の取引口座を設け、1次協力会社を増やすことで開発リソースを確保するSIerもある。CTCやCACなどがそうだ。CTC人事部の田中一男氏は「取引実態を細かに調べ、業務請負の実体がない企業を取引から外して、下請企業との直接取引に持ち込んだ例も多い」と話す。

 最近は、開発案件が急速に減っており、協力会社を選抜する好機にもなっている。「中小SIerにも優秀な技術者が多くいる。一律の外注制限で、彼らを開発の現場から締め出してしまうのは大きな損失だ」。コアの井手祥司社長は、一部の技術者が仕事を失っている現状に危機感をあらわにする。再び受託開発案件の活気が戻ったときに、どう開発リソースを確保するのか。課題を残しながら、ITサービス業界の外注改革は進んでいる。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら