「業界の悪しき慣行だ。『新3K』と呼ばれる過酷な労働環境の温床になっている」。「いや、技術者が終身雇用で働く日本では、開発リソースを流動的に調達するために欠かせない仕組みだ」─。

 システム開発案件を受注した元請けのSIerが、開発の実作業を協力会社、つまり1次下請け企業に外注する。1次下請け会社から、さらに2次、3次、4次へと外注を繰り返す。受託開発の多重下請け構造を巡っては長年、是非が議論されてきたが、業界構造が変わることはなかった。

 ここにきて、一気に変革が進み始めた理由は“外圧”にある(図1)。

図1●多重下請け構造や請負形態を見直す理由と課題
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品質とセキュリティ求めるユーザー

 最初の外圧は、システムの品質やセキュリティに対するユーザー企業の懸念である。

 大規模なシステム開発で下請けが5~6次に及ぶと、プロジェクトには最終的に100社を超える協力会社がかかわることも珍しくない。

 下請け構造が複雑になると、元請けSIerやユーザー企業が、プロジェクトに参加する協力会社の全容を把握できなくなる。開発力の低い下請け会社が参加すれば当然、システムの品質やセキュリティを確保することは難しくなる。

 実際に2000年以降、システム開発・運用の現場では、SIerや協力会社の社員が関与する事件が相次いだ。下請け会社の階層が複雑になった結果、情報が正確に伝わらなくなったことが原因で、トラブルに陥ってしまうプロジェクトも多い。

 これらを問題視したユーザー企業が、品質管理の強化と併せて、多重下請け構造の見直しをSIerに求めるようになったのだ。特に金融機関や製造業、官庁などの大半の企業が、「多段下請け構造を見直し、参加するスタッフの管理を徹底してほしい」という要請を強めている。

 もう一つの外圧は、厚生労働省や各都道府県の労働局による「偽装請負」の摘発・指導強化の動きである(図2)。偽装請負とは、一括請負契約などの業務委託の体裁を取りながら、現実には作業者が発注元から直接指示を受けて作業しているといった、違法な派遣行為のことだ。

図2●労働行政とITサービス業界を巡る主な出来事
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 労働局がここ数年、請負を適正化する指導を強化したことで、技術者派遣を活用するSIerが増えた。さらに改革を推し進めて、開発での多重下請けを制限するSIerが急増したのである。

 指導を受けたあるSIerは、「労働局は、何重にも連なる下請け構造があると、搾取構造がないかを調べるほか、多重下請けの解消を求めてくる」と証言する。こうした指導が、多重下請けに歯止めをかける業界の動きを加速させている。

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