英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム 英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム

 世界的な景気悪化の影響で多くのIT企業が打撃を受ける中,例外的に急成長を遂げている製品がある。小型・軽量を売りにした低価格ミニノートPC「ネットブック」である。

 台湾アスーステック・コンピュータ(ASUS)が2007年秋に発売した「Eee PC」を皮切りに,ほかのPCメーカーも次々とネットブック市場に参入。2007年には全世界で40万台だった販売台数が,2008年には1140万台という驚異的な成長をみせた。

 当初は発展途上国向けと考えられていたが,主要なマーケットは米国と欧州だ。2008年のネットブックの販売台数は,あのiPhoneさえも凌駕している。調査会社の米ガートナーは,2012年のネットブック販売台数が5000万台になると予測する。米ABIリサーチの予測はさらに大きく,2013年には1億4000万台になるとしている。

マイクロソフトは戦略変更

 ネットブックの登場によって,これまで20年以上にわたってパソコンの世界を支配してきた米マイクロソフトと米インテル,いわゆるウィンテル(Wintel)体制に変化の兆しが見えている。新バージョンが出るたびに高機能化するOSやCPUは,インターネットを閲覧する程度の機能で十分なネットブックにはふさわしくないからだ。

 ネットブックでは,低機能CPUでも動作するLinux OSのシェアが約30%もある。通常のPCではLinuxのシェアは1%程度で,Windowsが圧倒的だ。マイクロソフトは,ネットブックの台頭を脅威に感じているだろう。

 実際マイクロソフトは,Linuxがネットブックに採用されるのを阻止するため,より低機能なCPUでも動作するWindows XP Home Editionの販売中止予定時期を当初の2008年6月から2010年6月に延期した。さらにはWindows Vistaに次ぐWindowsの次期バージョン「Windows 7」は,ネットブックのような低機能マシンでも安定して動作すると言われている。マイクロソフトが従来製品より機能が少ないOSを出すのは,これが初めてではないか。

インテルと英ARMが対決姿勢

 インテルもネットブックの台頭に頭が痛いはずだ。同社のネットブック向けCPU「Atom」は,価格がたったの44ドル。同社の主力CPUで多くのノートPCに採用されるPenrynコアのCore 2 Duoが200ドル以上であるのに比べるともうけははるかに少ない。そのためインテルは2008年第4四半期の売上高予測を10億ドルも引き下げた。

 さらに,英ARMがネットブック市場に攻勢をかけている。ARMは携帯電話向けCPUの世界市場で90%の占有率を持つ企業で,同社が設計したARMアーキテクチャをチップ・ベンダーにライセンスしている。米クアルコムや米フリースケールはライセンスを受けて,インテルのAtomよりも安価で電池の持ちが良いCPUを出荷している。

 20年間続いてきたマイクロソフトとインテル帝国は,ネットブックの浸透で変貌が避けられないように思う。

ヨン・キム(Yung Kim)
英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
 為替レートが急に変化したので,製品価格の地域バランスが崩れている。つい1年前は日本で購入する製品はロンドンに比べて安かった。しかし最近それが逆転し,ロンドンの方が格段に安くなった。ロンドンの生活費はかつて世界で2番目に高かったが,最新の調査では40番目になったらしい。とはいえ,こうした相対的なランクは,その都市の中に居住し続け,世界経済の減速の影響を強く受けている人にはあまり意味がないのだが…。
出典:日経コミュニケーション 2009年2月1日号 p.87
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。