「携帯電話のカメラを向けて,その方角にある空間を検索し,評判の良いレストランを見つける」,「半径1km以内にいる友人を発見してメッセージを送る」,「携帯電話が3次元コンピュータ・グラフィックスで描画された地図(3次元地図)やパノラマ地図を使うナビゲーションで目的地まで誘導してくれる」──。

 上記の例はいずれも,ユーザーの現在位置や向いている方角などを把握し,それを地図と連動させることで実現できる。こうした高度なサービスが現実のものになろうとしている(図1)。

図1●進化する地図・位置連動サービス
現在位置に連動した情報を重ね合わせた,リッチな地図を実現できるようになる。図中のパノラマ地図は携帯電話用の「Googleストリートビュー」。3次元地図はNECマグナスコミュニケーションズなどが開発した「3D空間検索技術」。
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 インターネットの地図サービスは,「Googleマップ」の出現以降,利用者が急増している。検索サイト「goo」が発表した2008年の検索キーワード・ランキングを見ると,「地図」は13位で2007年の19位から順位を上げた。

 従来の地図サービスは現在地を確認したり,訪問先やレストランなどを探すときに使うものだった。それが,ユーザーの位置に連動した情報を地図の中に“重層化”し,自動的に通知できるサービスに進化する。利便性は今までの地図の比ではない。

 このような地図サービスの発展に政府も注目している。2007年に「地理空間情報活用推進基本法」を施行。地図空間情報の整備を進め,生活の利便性向上や新産業の創出を支援する。例えば経済産業省は,地図空間に関する政策プラン「G空間プロジェクト」を掲げ,「2013年までに全国レベルで3次元地図のデータベース構築を目指す」(経済産業省商務情報政策局の野口聡 情報プロジェクト室長)とする。経済産業省の予測では,新ビジネスの登場によって,地図サービス産業の市場規模は2008年の約4兆円から2013年には約10兆円へと急増。巨大産業に成長する可能性があるという。

最新技術の実装は既に始まっている

 こうした“G空間”実現の背景にあるのは,地図サービスや位置取得技術の進歩である。現状の地図サービスに,3次元など豊かな表現力のほか,高さや動きといった新たな情報要素,誤差1m程度という精度の高さが加わる(図2)。時間軸を加味して過去の3次元地図を閲覧できるようにする「4次元地図」の提案もあるほどだ。

図2●次世代地図・位置連動サービスと従来サービスの違い
図2●次世代地図・位置連動サービスと従来サービスの違い
次世代サービスは表現,測位の要素,誤差,対応デバイスなど様々な面で進化を遂げつつある。

 加えて,iPhoneの“マルチタッチ”に代表される新しいユーザー・インタフェース(UI)や,拡張現実(AR,augmented reality)技術,そして位置情報と連動させた情報を組み合わせることで,G空間として提供される地図サービスの内容はさらにリッチになる。地図の中に配置できる有用な情報は,オンラインの百科事典「ウィキペディア」や写真投稿サイト「Flickr」など,インターネット上にあふれるほどある。様々な技術やコンテンツとの融合により,ネット地図は無限の可能性を持ち始めた。

 こうした技術や情報を利用するために必要な画像処理エンジン,ユーザーの位置や動きをとらえるセンサーは,携帯電話を中心とするデバイスに実装され,利用環境が整い始めている。GPSは,2007年4月以降,緊急通報時のために携帯電話が標準塔載するようになった。最近ではニコンの「COOLPIX P6000」などデジタルカメラにもGPS内蔵機種が登場している。写真1枚ごとに撮影場所の位置情報を付加できるため,位置に基づいた写真の活用が可能になる。

 次回以降で,G空間を支える地図・位置取得技術の“凄み”を紹介しよう。

出典:日経コミュニケーション 2009年1月15日号 pp.24-25
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。