電子国会の実現

 国会については、「立法統合知識管理システム」が構築されるなど、継続的な情報化投資が行われてきた。この立法統合知識管理システムとは、国会議員をはじめ、各常任委員会や特別委員会での立案、審議、監査といった議員活動に必要な資料を効率的に収集・活用するためのシステムである。加えて、政府や国民に国会活動に関する情報サービスも提供する。

立法府における業務効率化と、関係機関との情報連携

 1996年に第1次国会情報化発展計画が、そして2001年には、第2次国会情報化発展計画が開始された。これらの計画に沿って、電子化された議事録システムや、国会総合情報システムなどが稼働している。

 第1次国会情報化発展計画(~2000年)では、立法情報化事業、すなわちクライアント/サーバー環境における情報化基盤や「国会総合情報システム」「会議録システム」などの基本的なシステムを構築した。国会電子図書館の構築、国会イントラネットシステムの導入も行われた。

 これに続く、後者の計画(第2次国会情報化発展計画(~2003年)では、Web環境に適合した「立法統合知識システム」「国会記録物管理システム」の構築、サイバーテロを防止するための「侵入探知システム」の構築やネットワーク・サーバのセキュリティシステムが強化された。また、憲法と国会関係法、ならびに立法関連情報のデータベースを構築、運用している。この計画は2003年まで行われた。

 とはいえ、多くのシステムは、国会内部の業務効率化を中心に行われており、外部の関係政府機関との情報流通ネットワークは満足に整備されていなかった。インターネットを通じた国民参加の場を拡げるには、国会そのもののオープンな情報化と、関連機関間の連携が鍵になった。

 電子国会実現事業の柱は、国会内部における「ネットワーク国会」の実現と、国民に開かれた「参加国会の実現」である。

「ネットワーク国会」とは、関連機関を含む国会内部の様々な組織間での、情報交流の活性化を図るもので、いくつかの電子化案件から構成される。テーマの一つが、国政の監査および調査といった、国会での審議や運営を左右する、書類の要求から提出までをすべて電子的に進めることである。ほかには、議案の審査や議決を電子的に処理するデジタル本会議場の構築、財政関連資料を連携する予算・決算審査業務の電子化、がテーマとして加えられた。

 「参加国会の実現」では、議会政治に必要な各種の活動や、立法情報、行政業務に対する統合知識管理体系を構築し、そのノウハウを積極的に共有する国会のあり方を模索した。情報通信技術を議会に積極的に活用することにより、国民が国政に参加できる多様なチャネルを構築・拡大し、活動情報を迅速に提供する目的が含まれている。

 例えば、大統領府のホームページ内に設けている国民提案、政策議論のためのサイト「e-people」をはじめ、国会のホームページからも政策提言ができる。そのほか、ほとんどの中央省庁や地方自治体なども同じような機能のサイトを用意している。

 提言した国民へのフィードバックもきちんと行われる。筆者が以前、大統領府に提言を送ったときは以下のような流れで政府から連絡が来た。まずはすぐに受付関連メールが返ってきた。そして、提案の内容を把握し、所管部署を決め、所管部署に転送するとともにそのが知らされた。移管された部署からは、引受内容についてメールが送られてきた。そして最後に受け付た事案に対する返事が来る(採択か不採択か、そしてその理由)。

 こうして2003年から2007年までに電子政府支援事業で構築された国会関連のシステムは、(1)議定資料電子流通システム、(2)財政分析システム、(3)e-議案システム、(4)議会参加ポータルである。

 (1)~(3)のシステムが、国会-政府間ネットワークの構築にかかわっている。

 「(1)議定資料電子流通システム」は、書類提出を電子化する事業の一環として、主に国政監査業務に関する資料の請求・提出を電子化する。「財政分析システム」は、予算・決算業務領域で関連資料の提出や審議を電子化するためのシステムだ。各種基金の財務状況といった、財政関連業務に必要な情報の効率的な提供によって、審議の精度やスピードアップを図っている。「e-議案システム」は、各種法案、予算・決算、国政監査など、立法業務全般を支援するシステムである。議案の受付から審査、議決、成果物の授受まで、すべての議案業務をシステム化して議案に関する各情報を体系化して提供する。国民向けの情報提供サービスも拡充された。

 (4)「議会参加ポータル」は、国民向けの情報提供に関するシステムだ。国会内部においては関連機関同士を電子的なネットワークで結び、国民を対象とする統合された情報サービスを提供する仕組みである。また、インターネットを介して国民が立法プロセスに参加する機会を拡大し、立法に関する業務の効率化を促している。さらに、デジタル本会議場を中心に議会のプロセスを記録し、会議の場でアウトプットされた情報を電子的に一元管理するシステムである。

図1●国会情報システム構成図
[画像のクリックで拡大表示]

国政への国民参加を促す、情報公開基盤を整える

 さて、2003年から2007年までのシステム構築の流れをご紹介したい。

 2003年6月から同年12月までの約半年間に、電子国会実現のための計画提示と、関連インフラの補強を推進する、第3次国会情報化発展計画のISP(情報戦略策定)が行われた。

 この場で「国民参加機能の強化」「関連機関とのネットワーク構築の強化」「国会知識経営体制の確立」という情報化戦略目標が導き出され、先進国の事例を踏まえた上で、最適なシステム・アーキテクチャが検討された。

 2003年8月から翌年6月までの間に、予算・決算、国政監査などの国会議定活動に必要な書類提出の電子化事業を通じて、国会と関連機関の間における電子的文書の流通システムを構築した。ネットワーク国会実現のパイロット事業として2004年には、国政監査などで、議員室や提出機関など約1500カ所が電子文書の流通システムを活用している。

 また、2004年9月から同年12月まで国会統合保安官制基盤事業が進められた。これは、国の主要情報保護基盤施設の一つである国会情報システムの保安強化を行うもの。国会が保有する国の重要情報資産を保護し、各機関における全般的な保安レベルをチェックするために実施された。

図2●e-議案システム概念図
[画像のクリックで拡大表示]

 2004年7月~翌年3月には、議会参加ポータルシステムが構築され、国民参加の場が設けられた。立法分野に関して、利用者のニーズを満たすオーダーメイド型サービス(個人がIDを取得してログインするとその人のためにカスタマイズしたページを見ることができるサービス)が提供されたことで、国民との双方向コミュニケーションは活発化。2007年には、月平均50万人が利用している。

 2005年11月から2006年6月までは、財政分析システムが構築された。財政分析システムの構築により予算案や決算関連資料を電子的に活用できることになった。

 なお、2006年9月開始されたe-議案システム事業は2007年3月に完了している。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら