社長は3割、現場が7割――。ITコンサルタントを経て2年前に社長に就任した鈴木氏は、自分流のワークスタイルを貫く。社長やマネジャとしての“あるべき姿”などない。「今の役割が適役かどうかは、考え方次第で大きく変わる」と語る。

鈴木 努(すずき・つとむ)氏

 社長という今の立場で話すと説得力に欠けるかもしれないが、私は「管理職」という役割がずっと嫌いだった。労務管理や予算管理に追われる人生を送りたくなかったし、現場感覚を失った状態で部下に指示する人になりたくなかったのだ。

 私はSEやコンサルタントとして、現場で自らシステムを企画・構築する立場で働きたかった。約10年前に大手ITベンダーを飛び出し、当時はまだ小さかった現在の会社に転職したのも、「そろそろ課長だぞ」と上司から言われたことがきっかけだ。

 同世代の人はわかると思うが、そんな“ワガママ”が通用するほど、世の中は甘くない。SEやコンサルタントとして、年齢と給与に見合ったパフォーマンスを出すには、1社から2社、2社から3社と案件を増やしながら、リーダーとして成果を出し続けなければならない。ふと気がつくと、転職先でも「管理職」にならざるを得ない状況になっていた。

 振り返れば、当時の自分は視野が狭かった。誰が決めたわけでもないのに、自分のなかの固定観念で、「管理職=労務・予算管理」と思い込んでいた。しかし、40歳が目前に迫ったころ、ふと「管理職の役割や仕事は、自分で決めればいいんだ」と気づいた。「管理と現場の両方をやればいい。結果を出せるなら自分流で何が悪い」と。

 しかし、会社という同じ舞台の上で私と一緒に演じてくれる社員がいなければ、いくら自分が「適役」と思っても、その舞台は完成しない。そのためには、社長として演じなければならないこともある。社員の働きを見ながら「自分だったらこうやる」などと比較してしまいそうな自分に気づいたら、「ダメダメ」と言い聞かせる。現場に7割出ているとはいえ、私は「社長」という役も持っているからだ。

 私は日ごろから周囲に対して、「Have Fun(楽しもう)」と言っている。困難にぶつかったときに、下を向いていたら余計につらくなる。社長や上司がしかめっ面で怒ってばかりいたら、ますます社員は気が滅入る。そんなときこそ、社長や上司が「楽しもう。責任は俺がとる」とか、「困難を解決するプロセスを楽しもう。そして、おいしいビールを一緒に飲もう」などと笑顔で話すほうが、ただ叱るだけよりもチーム力を発揮できる。

 サラリーマンでいる限り、仕事の内容とか役職とか、そういった「役」を自分で選べる機会は少ない。でも、考え方次第で、どうにでも変わる。10年後、自分がどんな「役」を演じているかはわからない。どんな役になったとしても、その役を「楽しむ」ことだけは忘れないようにしたい。

鈴木 努(すずき・つとむ)氏
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ 代表取締役社長
1987年3月東京理科大学理工学部卒業。同年4月に日本電信電話(現NTT)に入社。88年7月にNTTデータ通信(現NTTデータ)へ転籍し、ERPパッケージ・ソフトの企画・開発・導入支援を手掛ける。97年10月にケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズへ転職。06年8月から現職。1964年3月生まれの44歳。
出典:日経コンピュータ 2008年9月22日号 p.126
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