クラウド・コンピューティングに代表される世界のフラット化を支える物理層は,深度数千mの海底を縦横無尽に走る海底ケーブル。その事業は,800気圧の高水圧に耐えられるケーブルと中継器の製造および敷設技術が必要で,高い参入障壁を持つ。上位3社の世界シェア合計は実に95%。その中で3位につける国内勢のNECが,2008年12月5日にNEC山梨の中継器工場を披露した。

 見学したのは,海底ケーブルの光信号を増幅する中継器や分波器などを製造するNEC山梨の本社工場だ(写真1)。NECの海底ケーブルシステム事業は,米Tyco Telecommunications,フランスのAlcatel-Lucentに並ぶ世界3位のシェアを持つ。世界全体で20%,地の利を生かせるアジアでは40%のシェアを確保している。海底ケーブル・システムを構成する「陸上の光通信設備」「海底ケーブル」「光海底中継器」「ケーブルの敷設・保守」の要素のうち,今回の見学会では光海底中継器の製造工程を報道陣に公開した。

写真1●山梨県大月市にあるNEC山梨本社
写真1●山梨県大月市にあるNEC山梨本社
一見奇妙なUFO様の屋根を持つ中央自動車道沿いの建物がNEC山梨。海底で動作する中継器や地震計,光信号を増幅する「光海底中継器」,磁気抵抗素子(MRセンサ),信頼性評価や成分分析などを事業の柱とする。(写真提供:NEC)

 光海底中継器は,800気圧の圧力に耐える外郭「耐圧シリンダ」の中央部に,光信号の増幅器と障害監視装置を格納している(写真2)。中央部の両端,蛇腹部分から先は可動部で,光ケーブルと数珠つなぎにした場合でも1本のしなやかなロープのように扱える。中継器から伸びる光ファイバ・ケーブルは,頼りないほど細い。受ける水圧をなるべく少なくするためだ。

 収める光ファイバ・ペア(送信1本,受信1本)の数は,ユーザーに応じて2から8(4本~16本)。最大でも光ファイバの数は20本に満たないものの,波長を分けることで多重化するWDM技術を用いることで1Tビット/秒級の通信容量を実現できる。

写真2●NECの光海底中継器のスケルトン・モデル
水深8000mの水圧下での動作を保証する。保証期間は2年から5年だが,設計寿命は25年。
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 この光海底中継器を数珠つなぎにし,敷設船から数万kmにわたって沈めていく。中継器は一般に40kmから100kmの間隔で設置するため,日本とアメリカ西海岸(約8000km)を結ぶ場合で80台超の中継器が必要だ(図1)。

 ただし全距離を敷設船1隻でまかなうことはまれで,通常は東西などで分割して同時並行的に敷設作業を実施。船上で海底ケーブル同士が“握手”する。

図1●海底ケーブル・システムの基本構造
海岸沿いの局舎からケーブルを鋤(すき)のような装置で船上から埋設し,海溝を含め海底にケーブルを這わせて目的地に陸揚げする。
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