「コスト削減以上に効果的だったのは機能強化」。ちば興銀の栗原IT企画室長は、こう断言する。同行は地銀共同センターへの加盟によって、オンラインの24時間稼働、コンビニATMとの接続などを実現した。いずれも地銀共同センターが提供する標準機能である。「自前で実装するのは投資効果の面で不可能だ」(栗原IT企画室長)。

 ちば興銀の地盤である千葉県は、地銀2位の千葉銀行やメガバンクとの競合が激しい地域。規模で劣るちば興銀は、共同化への参加によって、大手と伍するシステムを入手できた。地銀共同センターを運営するNTTデータは、13行からの利用料の一部を原資として、毎年1000人月超の開発案件を実装する。ちば興銀単体はその恩恵を受けられる。単独だと「投資は半分にも届かない」(地銀共同センター関係者)。

 八十二銀行が主導する「じゅうだん会」に参加する阿波銀行も、「個人向けのインターネットバンキングや法人向けのネット取引サービスなど、地銀トップクラスのシステムを得ることができた」(前田清毅事務部部付部長)。法制度が変更されても、対応しやすい。「決済性預金を導入する際は、行内向けの通達資料まで八十二銀のものをコピーして使ったため、行内の負担はほぼゼロだった」(同)。さらに阿波銀は、開発スピードの向上を評価する。「新機能を開発なしでテストだけで使える」(同)からだ。

SOA基盤の導入に踏み切る

 共同化を推進・主導する大手行はこうしたメリットを得られないように思えるが、そうではない。参加行から得た利用料を原資に、さらなる機能強化やシステム基盤の刷新に踏み切れる(図4)。例えばじゅうだん会を主導する八十二銀は現在、新融資支援システムを新規開発中だ。来秋にも「共同化の範囲を拡大する」(佐藤宏昭システム部副部長)。これは単なるサブシステムの導入にとどまらない。同時にSOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づくシステム連携基盤を構築する(図5)。日本IBM関係者によれば「地銀では初の取り組み」である。

図4●システム共同化を主導する大手地銀と、参加する中小地銀それぞれのメリット
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図5●じゅうだん会によるシステム連携基盤の導入イメージ
SOA(サービス指向アーキテクチャ)の採用により、共同化の範囲を柔軟かつ迅速に拡大できるシステム基盤の実現を目指す
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 システム連携基盤の構築工数は1000人月。1人月100万円としても開発費用だけで10億円だ。製品の購入費用もかかる。基盤の刷新にこれだけの費用を投じるのは、単独投資では難しい。

 山陰合同銀行、みちのく銀行とシステムを共同化している肥後銀行も、開発ベンダーの日立製作所と共同で、SOAに基づくチャネル連携基盤の導入をほぼ決めている。ATMや営業店システム、コールセンターなどチャネルごとに用意していた接続サーバーの統合により、「チャネル連携サービスの強化を目指す」(岩本義弘システム部部長)。

 地銀共同センターを推進する京都銀も、新システムの開発に積極的だ。サブシステムを先行導入して稼働実績を上げてから、地銀共同センターに共同システムの素材として提供する。ITベンダー関係者は「京都銀と組めば13行に売れる」と考え、同行に有利な条件を提示する仕組みだ。例えば京都銀は日立と共同で、投資型商品の販売機能を備えた次世代の情報系システムを稼働させている。地銀共同センターは、これらを取り込んで共同化の範囲拡大を進める意向だ。

出典:日経コンピュータ 2008年10月1日号 pp.111-112
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