オープン化とグローバル化の進展によって,端末メーカーを取り巻く状況にも大きな変化が訪れている。

 まず,Symbian,Android,LiMoといった携帯電話の共通プラットフォームが無償提供されることで,端末の開発コストは大きく減り,開発期間は短縮される。

 しかし,共通プラットフォームは端末メーカーにとっては“諸刃の剣”となる。それは,パソコンがたどってきた歴史を振り返るとよく分かる。かつてパソコンは,独自プラットフォームによる製品が乱立し,国内ではNECのPC-9800シリーズが市場を席巻していた。ところが,80年代半ばに米IBMのPC/AT互換機が登場したことで流れが変わった。ハードウエアとソフトウエアの技術仕様が標準化されたことで多数のメーカーがパソコン市場に参入。パソコンの開発・製造は一気にコモディティ化し,気が付けば“薄利多売”品となった。

 パソコンと同様,携帯電話でも世界共通プラットフォームの登場でコモディティ化が進み,端末メーカーの新規参入による端末価格の下落や独自仕様の退出といったシナリオが見えてくる(図1)。そうなると,安価な海外メーカー製端末が次々と国内で販売されるようになると予測できる。

図1●パソコンの歴史をなぞる携帯電話
コンピュータの世界では,IBMのPC/AT互換機の登場が端末の低価格化やアプリケーション開発の活性化につながった。携帯電話の世界でも,Androidをはじめ共通プラットフォームの登場をきっかけに同様の現象が起こりそうだ。
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収益構造の見直し待ったなし

 端末の低価格化や海外メーカーの参入は,国内の端末メーカー間の競争がさらに激しくなることを意味する。さらに追い討ちをかけるのが,国内市場の端末販売の急激な落ち込みだ。割賦販売の浸透によって「商習慣が一変」(端末メーカー幹部)し,ユーザーの端末購入サイクルが長期化したのである。

 販売台数の伸びが見込めないことから,携帯電話事業者はメーカーから調達する端末台数を絞り込む方針だ。ある端末メーカーの幹部は「市場規模縮小に合わせて経営体質を変えていくか,海外市場に出るなどして規模の不足を補っていくのか,選択を迫られている」と危機感を募らせる。

 実際,この1年の間,国内の端末メーカーの再編が相次いだ。三洋電機は携帯電話事業を京セラに売却,三菱電機は端末事業からの撤退を決断した。今後,市場が縮小し海外メーカーとの競争が激しくなれば,さらなる再編が起こる可能性もある。

 こうした逆境の中,端末メーカー各社は「あらゆる層の客を狙うよりも,ターゲットを明確化して端末の付加価値を高めていく」(富士通の佐相秀幸経営執行役モバイルフォン事業本部長),「パソコンとの連携などでこれまでとは違ったサービスを提供する」(NECモバイルターミナルプロダクト開発事業本部の西大和男副事業本部長)と,次の一手を模索している。

 生き残りを賭け,端末メーカーの収益構造の見直しは待ったなしだ。

この記事は,『日経コミュニケーション』2008年10月1日号 pp.32-45に掲載された内容を再編集したものです。