マルチプレフィックス問題は,ISPとNGNの両方が端末にIPv6アドレスを配布することで,正常に通信できなくなる現象である。

 IPv4アドレスの場合,NGN商用サービスのフレッツ 光ネクストと非NGNのBフレッツのいずれでもこうした問題は起こらない。端末に割り当てられるのはISPが配布したIPv4アドレスだけだからだ。

 これに対してIPv6は,その仕様上,一つのインタフェースに複数のIPアドレスを設定できる。このため,IPv6を使うNGNとISPのインターネット接続サービスを併用すると,端末には二つのIPv6アドレスが割り当てられる。

インターネットと閉域網の組み合わせが問題

 仕様として決まっている以上,本来は1台の端末に2個のIPアドレスが割り当てられても問題にはならないはず。ところが,インターネットにつながるオープンなISPのネットワークとクローズドなネットワークのそれぞれにつながっている環境では,うまく動作しないことがある。

 実は,IPv6のマルチプレフィックス問題が顕在化したのは,今回が初めてではない。NTT西日本の「フレッツ・光プレミアム」とNTTコミュニケーションズの「OCN IPv6」で,同様の問題が発生した。これもクローズドなネットワークとオープンなネットワークの組み合わせである。

 例えばインターネット上のサーバーに端末からパケットを送る場合,そのパケットの送信元アドレスとして,ISPが配ったIPv6アドレスではなく,クローズドなNGN側から受け取ったアドレスを使ったとする。すると,インターネット上のサーバーが端末に返信する際,そのあて先がNGNのアドレスになってしまう。インターネットとNGNは直接つながっていないため,返信パケットは端末に戻ってこなくなる。

IPv6通信はトンネリング方式が有力

 NGNでのマルチプレフィックス問題の解決に当たっては,NTT東西とJAIPAが既に話し合いを始めており,2008年12月中に結論を出すことになっている。

 IPv6通信方式として,JAIPAは3方式を提案した(図1)。案1と案2は「トンネリング方式」と呼ばれる方法で,NGN上に「トンネル」を確立し,ユーザーとISPをつなぐ。現在,IPv4で利用する仕組みと同様の方式である。案3は,「ネイティブ方式」と呼ばれる方法で,NGNとインターネットをIPレベルでつなぐ。NGN内の通信とインターネットとの通信を区別せず,ISP網を通さずにNGNだけでパケットを転送する。

図1●IPv6通信を実現する3方式
日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)がNTT東西に示した三つの案。JAIPAは案2を推しており,最終的にはその案2で決まりそうだ。
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 これらの案のうち,ISP側としては案3は受け入れられないという立場。「NTTだけですべてできてしまう方法では,ISPの自社網に意味がなくなる。ISPのビジネスモデルにかかわるので,ISPとしては案3の選択はあり得ない」(JAIPAの立石聡明副会長)。「インターネットのパケットをそのまま流すとなると,『閉域網で高いセキュリティを確保する』といったNGNの構想自体にも矛盾する」(木村氏)という見方もある。こうしたことから,JAIPAとしては案2を推している。「8月25日の作業部会では,JAIPAは案2でいくと正式表明した」(立石氏)。

 NTT側としては,「こちらからどの方式が良いとは言いにくいが,ユーザー視点や技術的な観点から提案を出したい」(NTT西日本 サービスクリエーション部 フレッツサービス部門アクセスサービス担当の大西秀隆担当部長)という。最終的にどうなるかは12月末の結論を待つ必要があるが,案2を基本とし,一部のISPが案1を採用するという方向で固まりそうだ。

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