2008年。消費者や企業といったユーザーがクラウドで実行できるコンピューティング・サービスの種類や規模は,猛烈に拡大している。AmazonやGoogleが,相次いで彼らの運用するデータセンター(=クラウド)を第三者に開放し,誰もがクラウドの上で,自由にアプリケーションを開発・実行できるようになったからだ。

 先駆けとなったのは,Amazonが2006年12月に開始した「Amazon EC2」。続いて2008年2月には,CRM(Customer Relationship Management)のSaaSベンダー 米Salesforce.comが,同社のデータベース基盤を使ったカスタム・アプリケーションを第三者が開発できる「Force.com」の提供を開始した。2008年4月には,Googleが第三者のWebアプリケーションをホスティングする「Google App Engine」を始めた。

 開発環境も充実してきた。Force.comの場合,開発者向けに「APEX」というJavaベースの専用プログラム開発言語と,「VisualForce」と呼ぶビジュアル開発環境を用意している。

 これらは,アプリケーションを実行するプラットフォームやインフラストラクチャをネットワーク経由で利用する「サービス」として公開したものであることから,「PaaS:Platform as a Service」「IaaS:Infrastructure as a Service」と呼ばれている(図2)。

図2●「プラットフォーム」や「インフラ」もサービスに
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 PaaS/IaaSを利用すれば,冒頭で紹介したAnimotoのように,資本の限られるスタートアップ企業でもGoogleやAmazonに匹敵するSaaS事業者になれる。一般ユーザーにとっては,SaaSとして利用できるアプリケーションの種類が,急速に増加する。

 企業が社内で利用するコンピューティングに,PaaS/IaaSを利用するケースもある。米New York Timesは2007年末,過去100年分の新聞記事をPDF化するために,Amazon EC2を使用した。合計で数T(テラ)バイトに及ぶ40万5000個のTIFF画像をPDFに変換するのに,Amazon EC2上の仮想マシン100台を24時間使用したという。その際にNew York TimesがAmazonに支払った料金は,EC2の使用料が240ドルで,データ転送料が1000ドル程度だと見られる。

 今や開発者は,サーバー・ハードウエアやOSといったソフトウエアを購入することなく,AmazonやGoogleが提供するPaas/IaaS上で様々なアプリケーションを開発し,実行できるようになった。しかも,PaaS/IaaSには,サーバーやソフトウエアを購入するのに比べて,様々なメリットが存在する。

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