MVNOと携帯電話事業者の相互接続は,来春に予定するレイヤー2接続でサービス設計の自由度がさらに高まる。

 例えばユーザーが使う端末にプライベート・アドレスを割り当て,MVNOの網を介して社内のネットワークに直結するサービスが考えられる。プライベート・アドレスを持つ端末に対しては,インターネットからは直接通信できない。これによりモバイル利用時のセキュリティを高められるほか,ゲートウエイ装置でインターネットの利用状況を監視するサービスが可能になる。

 日本通信は,移動通信と固定通信を組み合わせた,回線レベルでのFMCサービスも提供できるようになるとみる。「回線レベルのFMCサービスは,認証やセッション管理などのプラットフォーム機能をMVNO側で持たなければ実現できない。レイヤー2接続が本命だ」(福田常務取締役)。

 相互接続には,レイヤー2接続とレイヤー3接続の2種類があるが,日本通信とNTTドコモが2008年7月に実施した相互接続はレイヤー3接続になる。レイヤー3接続の場合,セッション管理やIPアドレスの割り当ては基本的に携帯電話事業者に任せることになるため,サービスの自由度は限定されてしまう(図1)。

図1●レイヤー3接続とレイヤー2接続の違い
レイヤー2接続の場合はセッション管理やIPアドレスの割り当てをMVNOができるので,レイヤー3接続に比べてサービス開発の自由度が高い。
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 これに対してレイヤー2接続ではL2TPを使ってユーザーの通信をMVNOの網に直接収容する。IPアドレスの配布や認証,セッション管理をMVNO側で実施できる。サービス設計の自由度が高く,付加価値を出しやすくなる。

 ただし,レイヤー2接続はMVNO側の設備負担が増える。NTTドコモと日本通信が来春に予定するレイヤー2接続は「日本通信が中継パケット交換機を開発,設置することに決まった」(日本通信)という。守秘義務の関係で詳細は非公開としているが,上記の発表を踏まえると,通常はNTTドコモの網内にある中継パケット交換機を日本通信が開発することになった模様だ(図2)。中継パケット交換機の開発は一般に最低数億円かかると言われ,運用にも高度なスキルが必要となる。日本通信と同じ方法でレイヤー2接続を実現できるのは大手プロバイダなど一部に限られるだろう。

図2●レイヤー2の相互接続は莫大な初期投資とスキルが必要
NTTドコモと日本通信のレイヤー2接続では「中継パケット交換機」と呼ぶゲートウエイ装置を日本通信が開発する。中継パケット交換機は最低数億円と言われ,運用には高度なスキルが必要になる。
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 その場合も,初期投資を回収するには相当のユーザー数を獲得しなければならない。そこで,レイヤー2接続を実現した日本通信や大手プロバイダがMVNEとなって他のMVNOの参入を支援していくことになる。

出典:日経コミュニケーション 2008年8月15日号 pp.35-37
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